裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
高等裁判所
- 事件番号
昭和28(う)1761
- 事件名
公職選挙法違反被告事件
- 裁判年月日
昭和29年3月31日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第四刑事部
- 結果
棄却
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第7巻3号345頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 公職選挙法第一三八条第一項にいわゆる戸別訪問の事例 二、 同条同項但書にあたらない事例
- 裁判要旨
一、 犯人が選挙人甲、乙、丙、丁、戊等を往問するにあたり同人等居住部落に入つてから自転車を降り、これを押しながら歩行し以下の各所に立ち止り、(一)甲及び乙についてはいずれも同人等居宅の門前(正確にいえば居宅前庭の生垣の入口)でその門から真直に見透しうる居間の軒下にいた甲の妻およびその門に近く前庭にいた乙に対し、(二)丙及び丁についてはいずれも同人等が日常竹細工等の内職に使用し、地主もこれを黙認し、さながら同人等の仕事場と化しているその居宅前空地の柿の下の所でその居宅を確めた上同所で竹細工作業中の同人等に対し、(三)戊については同人居宅前の生垣の所で右生垣越しに同所から容易に見透し得る奥座敷にいたその妻に対し、それぞれ投票を依頼する旨の挨拶をし同人等もその声をきき来意を知つて応答した場合には、右所為は、公職選挙法第一三八条第一項にいわゆる戸別訪問にあたる。 二、 公職の候補着である犯人と訪問した相手が同村の生れで年令も三年を距るに過ぎず同じ頃同一小学校に通学し互に顔見知りであり、幼少の時代は学校友達で共に山野に遊び長じては魚釣りを共にすることがあつたとしても、農地改革前一方は村内の豪農であつたに反し相手は小作人階級であり互に相手の家を訪問したり、祝儀、不祝儀のやりとりをすることも全くなく魚釣も偶然釣場で顔を合わす程度に過ぎず格別懇意の間柄でないことが認められる場合は、同条同項但書の規定する事由がないものと認めるのが相当である。
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