裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
高等裁判所
- 事件番号
昭和27(う)615
- 事件名
業務上横領被告事件
- 裁判年月日
昭和28年4月6日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第一刑事部
- 結果
破棄自判
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第6巻4号458頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
公団資金の不当支出分配と公団役職員の業務上横領罪の成否(期待可能性理論適用の一事例)
- 裁判要旨
公団業務遂行の阻害が、国民生活の安危に重大な関係を有する場合、同公団労組員の全国に跨がるストライキ突入による同公団業務阻害の計り知ることのできない危機に直面する頻度が大きく座視するに忍びない情勢のもとにおいて、同公団幹部役員が、寧ろ不当な労働条件下に忍従献身している労組員の憫諒すべき各般の実情に照らし、その経済的要求が洵に妥当なものであることに思いを致し、管轄官庁その他の関係当局に特例給与の認可を要請したが、その実質的な必要を認められていながら、占領軍管理下の客観情勢は、遂に、これを容れるところとならず、それかといつて、逼迫せる再三にわたる緊急の状態をそのまま放任するに忍びず、真に止むを得ない措置として、敢て肥料配給公団令所定の給与規定に違背して貸付金等の名目で・その業務上保管する公団資金を公団の全職員に分配給与するに出でた所為は、寧ろ、前示重大使命を担う公団業務の円滑な運営上真に止むを得ざるに出でたものに係り、当時、同じくその衝にあたる他の通常人においても、この違法な所為を避け、他に適法な所為に出ずべきことは、到底期待し得なかつた事情にあつたものということができ、従つて、社会一般の道義の上において非難のできない真に止むを得ざるに出でた犯罪責任なき所為に属し、法律上罪とならない。
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