裁判例結果詳細

事件番号

昭和25(行ナ)20

事件名

公正取引委員会審決取消請求事件

裁判年月日

昭和26年11月30日

裁判所名・部

東京高等裁判所 第三特別部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

第4巻14号529頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

一、 事業者団体法における共通の利益の問題 二、 株式会社と事業者団体 三、 株式会社が事業者団体となる実例 四、 共通の利益は事業者団体の構成員の全員につき共通であることを要するか 五、 統制経済と事業者団体法 六、 事業者団体法違反行為と公共の福祉 七、 事業者団体法の規整の対象 八、 事業者の結合体とは何か 九、 公正取引委員会における審判の対象たる当事者

裁判要旨

一、 株式会社が事業者団体であるとするには、株主の共通の利益の増進が会社設立当初の目的である必要はなく、また特に共通の利益の増進を目的とするという別段の意図目的があることも必要ではない。会社の事業経営が現に共通の利益の増進に直接役立つていれば足りる。 二、 株式会社であつても事業者団体法第二条にいう事業者団体に該当する場合はあり得るところで、二以上の事業者が株式会社制度を用いて結合し、その運営によつて共通の利益の増進をはかる場合はこれにあたる。 三、 株式会社の事業経営によつて会社に利益が帰属し、これが各株主に配当の形式で分配されることは、株主の事業者としての利益ではない。 四、 砂糖の卸売業を営む株式会社の株主中、九二%が砂糖小売業者で会社の営業形体が株主たる小売業者の組合と密接不可分の関係にあり、会社がこれら株主に砂糖の卸売をしている場合は小売業者たる株主は右取引によりかかる卸売商をもたない他の小売業者に比して取引上有利の地位に立つから、会社の砂糖卸売の経営は小売業者にとつて共通の利益増進に役立つ。砂糖に配給統制があることは、これを否定せしめない。 五、 事業者団体の要件である共通の利益は団体の構成員全員について共通である必要はなく、二以上の事業者につき共通であれば足りる。利益を共通にする事業者が団体の運営を左右するに足りない程度に無力で団体の運営上この共通の利益がかえりみられず結局団体の目的といえない場合は問題外であるが、共通利益の増進が団体の目的として容易に変更廃止されない程度に安定し、現に団体の運営によつてその共通利益が増進され、他の構成事業者によつて抑制されるおそれがなければ、一部少数の事業者の共通の利益の増進でも団体の目的と解して差支ない。 六、 今日行われる統制経済は全然自由競争を否定するものではなく、統制経済下の行為であるからといつて事業者団体法の適用を免れ得ない。 七、 私的独占禁止法ないし事業者団体法はそれ自体公共の福祉に奉仕するために必要な拘束を加えようとするものであるから、ある行為がこれらの法律に違反すると認められる以上、それ自体公共の福祉に害ある性格をもつものであり、かかるものとして法的制約を受ける。 八、 事業者団体法の規整の対象は事業者団体そのものにあり団体の実体は事業者の結合体であつて、結合せる事業者ではない。 九、 事業者団体が法人もしくは人格なき社団財団又は一定の名称もしくは代表者の定めがあつて構成員の存在と別個の存在を識別し得る場合の外、単なる契約関係の如き結合体であるときは、結合せる構成事業者の全員を全体として事業者の結合体とする。この場合も法の対象となるのは事業者の結合体であつて結合せる個々の事業者ではない。 一〇、 事業者団体法違反の故をもつて公正取引委員会の審判に付せられるのは、事業者団体すなわち事業者の結合体そのもので個々の構成事業者ではない。 公正取引委員会は、事業者団体法違反の審判手続において、事業者団体の外に構成事業者を当事者としてこれに排除措置を命ずることはできない。

全文

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