裁判例結果詳細

事件番号

昭和42(う)953

事件名

建造物侵入、建造物損壊、暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件

裁判年月日

昭和44年10月3日

裁判所名・部

大阪高等裁判所 第二刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

第22巻5号697頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

一、 いわゆる闘争手段としてのビラ貼りの行為が刑法第二六〇条の建造物損壊および同法第二六一条の器物損壊に該当するとされた事例 二、 右ビラ貼りの行為が労働組合法第一条第二項本文にいわゆる正当な組合活動にあたるとしてその罪責をいずれも否定すべきものとされた事例

裁判要旨

一、 生コンの輸送を業務とする会社の労働組合員ら、十数名が、会社に対するいわゆる闘争手段として、二つ切大等にした新聞紙に「団結」、「組合破壊合理化反対」などと墨書したビラを、同会社営業所の事務室および職員宿直室等に使用されている木造平屋建建物の壁、天井および開戸に約八〇枚、同建物備付けの窓ガラス戸および出入口引戸に約八六枚ならびに同従業員控室、仮眠室等に使用されている木造二階建建物の壁、天井および開戸に約一四三枚、同建物備付けの窓ガラス戸および出入口引戸に約八〇枚、それぞれメリケン粉糊を用いて貼付した結果、右双方の建物とも、壁ガラス戸、引戸等ガラスの入つた部分はほとんどビラで貼りつくされたために、はなはだしく体裁をそこなうとともに、採光にもかなりの支障をきたし、かつ、建物内外、殊に右事務室内部、従業員控室から二階仮眠室に昇る階段両側、控室便所等の壁、腰板、開戸等には大量のビラがきわめて乱雑にほとんど隙間なく貼りつめられたために、営業所等の施設全体が無秩序で不清潔な様相を呈するにいたつたときは、右各建物には一般顧客の出入が予想されず、また、右建物が建造以来長い年月を経ていて、日常の作業に伴うセメント、砂ぼこり、泥水等によつてすでにうす汚れた状態になつていたとしても、右ビラ貼りの行為は刑法第二六〇条の建造物損壊および同法第二六一条の器物損壊に該当する。 二、 労働条件に関する労使の対立から、会社側が労働組合の切り崩しを企図して、従業員中組合から脱退した者と組合に残留する者とを差別し、組合に残留する者に対してのみ時間外労働を停止して、それらの者の月収が半減するような経済的苦痛を与え、また、かねて右組合との間に締結されていたいわゆるチエツクオフ協定の一方的廃棄を通告するなどの措置をとつた場合において、これに対抗して、右労働組合の組合員が、組合からの脱落阻止を呼びかけるとともに、会社側に右の措置に対する抗議とその解消を要求する目的で、前項に掲げるビラ貼りの行為を行なつたときは、右組合員におけるビラ貼りの行為は、労働組合法第一条第二項本文にいわゆる正当な組合活動の範囲に属するものとして、これについて前記建造物損壊および器物損壊の各罪責を問うことはできない。

全文

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