裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
高等裁判所
- 事件番号
昭和27(ネ)553
- 事件名
損害賠償請求控訴並びに附帯控訴事件
- 裁判年月日
昭和29年9月29日
- 裁判所名・部
大阪高等裁判所 第三民事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第7巻10号780頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 小型自動車運転者の注意義務 二、 労働者災害補償保険法による保険給付と民法による損害賠償との関係 三、 労働基準法第八四条第二項の「同一の事由」の解釈
- 裁判要旨
一、 およそ自動車の運転に従事する者は、その操縦に当つては深甚の注意を払い、常に進路の前方を警戒し、交通事故の発生を未然に防止すべき義務があり、殊に先行する大型貨物自動車に近接しその車体の蔭に視界を妨げられながら、その後を追つて直線道路を疾走する小型三輪貨物自動車の運転者は、先行車の動静に細心の注意を払つて運転を継続すべきで、自動車が進路の前方の障害を避けるため進路を変えることはよくあることであるから、先行車が右に進路を変えたときは、進路の前方に避譲すべき障害があるものと感知し、即時急停車するか、少くとも危急に臨んで急停車の措置が間に合うように適当に速力をゆるめて徐行するか、あるいは先行車にならいハンドルを右に切つて進路を変える等臨機適切の処置を講ずべき注意義務がある。 二、 使用者は、労働者が労働者災害補償保険法による保険給付を受けた場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害補償の義務を免れる。 三、 労働基準法第八四条第二項にいわゆる災害補償と民法上の損害賠償とが「同一の事由」であるということは、単に同一の災害から生じた損害であることを指すものではなく、災害補償の対象となつた損害と、民法上の損害賠償の対象となる損害とが、同質同一であり、民法上の損害賠償を認めることによつて二重の填補を与えられる関係にあることを指称する。
- 全文