裁判例結果詳細

事件番号

昭和54(う)398

事件名

業務上過失致死、同傷害被告事件

裁判年月日

昭和57年9月6日

裁判所名・部

福岡高等裁判所 第三刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

第35巻2号85頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

一 構造型過失に基づく観念的競合犯の公訴時効 二 憲法三七条一項の迅速な裁判の保障条項の趣旨を被疑者に推及できる限界 三 構造型過失に基づく業務上過失致死傷罪における実行行為性 四 同罪における結果発生の予見可能性の意義

裁判要旨

一 観念的に競合するいわゆる構造型過失犯(判文参照)における公訴時効期間の算定については、その各罪の結果が公訴時効期間内に連鎖して発生した場合においてのみ、これらを一体として観察し、右時効的連鎖を有しない場合には分割して各別に観察すべきである。 二 憲法三七条一項の迅速な裁判の保障条項の趣旨を被疑者に推し及ぼすとしても、それは当該事件に関し捜査官が強制捜査を開始した以後に限るのが相当である。 三 企業の管理者が企業活動から常時生ずる工場廃水を企業施設外に排出することを決定する行為、又はこれと競合する指揮命令権者の排水関係行為は、業務上過失致死傷罪の実行行為としての性能を具有するものである。 四 構造型過失犯においても、結果発生の予見可能性は、その対象に関し内容的に特定しない一般的又は抽象的な危倶感ないし不安感を抱くだけでは足りないが、特定の結果及び当該結果の発生に至る因果関係の基本的部分、本件においては、人が工場の排水中に含有される有毒物質により汚染された魚介類を摂食することによつて、水俣病に罹患し、死傷するおそれのあることを予見できれば足りる。

全文

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添付文書1

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