裁判例結果詳細
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高等裁判所
- 事件番号
昭和28(ネ)503
- 事件名
家屋収去土地返還請求事件
- 裁判年月日
昭和30年4月13日
- 裁判所名・部
福岡高等裁判所 第三民事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第8巻3号203頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 借地法第九条にいわゆる一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合の意義 二、 右に該当する一事例
- 裁判要旨
一、 借地法第九条にいわゆる一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合というのは、賃貸借の目的、動機、建物の設備、構造その他の事情から賃貸借を短期間内にかぎつて存続させる合意があつたと認むべき相当の理由がある場合を指称する。 二、 今次の戦災によつて焼失した建物の敷地が、空地のままとなつていたので、他から製材業を営むためこれが借用方を懇請せられたところ、当時獣医の資格を有する空地所有者の三男が独立開業の目的をもつて病院の建設を計画していた関係から、右空地を長期にわたつて賃貸することのできない事情にあつたけれども、その計画はさしあたり具体化する運びに達していなかつたため、それまでの期間空地のままに放置しておくわけにもいかないと考え、当事者間に、賃貸借の期間を昭和二一年六月から同二六年五月末日までの五ケ年と定め、特約事項として、借主が右地上に建設する建物は明渡に支障がないよう製材機械ないし材木が雨に濡れない程度の、しかも何時でも取り毀しうるバラツク建とすること、右五年の期間においても貸主が是非必要を生じ相当期間前に借主に通知して明渡を求めたときは、借主はこれに応ずる旨を約定し、借主は約旨に従い借地上に杉皮葺の簡単なバラツク式建物を建築して製材業を始め、借地料はその後の経済事情の変動にもかかわらず、当初約定の一ケ月三五〇円のままに据えおかれている等の事情が存する場合は、右賃貸借は借地法第九条にいわゆる一時使用のため借地権を設定したことが明らかな場合にあたるものと認めるのが相当である。
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