裁判例結果詳細

事件番号

昭和32(う)357

事件名

贈賄被告事件

裁判年月日

昭和34年3月31日

裁判所名・部

仙台高等裁判所 刑事部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

第12巻4号284頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

間接事実を自白の補強証拠たり得るものと認めた一事例

裁判要旨

「本件Y村役場庁舎新築工事下金の早期支払をうけるにつき、六月一〇日頃、私と工事代理人D等と、A村長宅へお願いに行き、その後Dが何度もA村長にお願いしたが、私はお盆の時八月一六日、役場にA村長を訪ね、旧庁舎宿直室で『いつもお世話になつているが、お盆でもあるし、出来高の百パーセント見て貰いたい』と頼むと、A村長は『俺も心得ている』と言つたので、これを機会に『お孫さんにやつてくれ』と、二万円の札束をA村長の上衣のポケットに押込んでやつた」「お盆の下金一五〇万円を支払つて貰つてお盆の会計を一切すませたが、診療所の特命請負についても九月一〇日頃B村議から一応A村長が提案物だからA村長に渡りをつけておけといわれたので、A村長のところへ行つてお願いすると、A村長は一応歎願書を出してくれれば合法的にうまくゆくという話で、九月一九日か二〇日頃の村会で診療所の特命請負が自分にきまつたので特にその建築資材に村有林の特売をうけたいと考え、九月二二日役場庁舎工事現場をA村長と私で視察していた時、診療所工事の請負を特命にして貰つたお礼を述べ、その建築資材の特売を願つたところ、A村長は歎願書を出してみたらよかろうと言つてくれたので、石造倉庫裏の誰もいない所に誘つて、二万五千円の札束をA村長のポケットに押込んでやると、A村長はいやあと言つて受取つた」「一〇月中旬の村会の村有林の特売が議決され、しかも予定よりずつと多い特売になつて、すべて自分の思うとおりに行つたので、A村長に今までのお礼をしなければならないし、将来の工事下金についても便宜な取扱をうけたい気持もあつて、一一月一七日前記役場宿直室でA村長に対し世間話や右お礼を言つたあとで、A村長が診療所の特命請負や村有林の特売で村会の反対派から色々文句をいわれて困つたというような話をはじめた機会に『えらい目に遭われたでしよう、なにもないから』といつて、用意の三万円の札束をA村長の前に差出すと、いやそんなことをしていいのかと言つたが、別に断りもせず手差出して受取つた」「右贈つた金は当時請負つていたM鉱山及びM村診療所の各工事代金下金の中から人夫賃や資材費を支払つた残りを妻に預けておき、本件Y村へ行く時妻から貰つて行つたもので、一回目と二回目はいずれもM鉱山の分で三万円位宛持つて行き、三回目はM村診療所の分で三万七、八千円持つて行つた」旨の被告人の自白に対し、被告人側工事関係者の間には当時贈賄しなければ仕事にならないという空気が満ちていて、被告人は部下に対しB村議C村議等有力者に適当にやつておけと言つており、被告人と工事代理人D等がA村長に対し役場庁舎新築工事請負代金内金の早期かつ多額の支払方を何回も頼み、本件お盆の下金も被告人が同様頼んだ事実、A村長が工事監督者の忠告をうけながら被告人に対し敢て出来高証明なしに役場庁舎新築工事請負代金下金を前後数回に亘つて支払い、本件お盆の下金も早期かつ多額に計一五〇万円支払つた事実、被告人がA村長に対し本件診療所工事の特命請負及び村有林の特売を頼込み、村会に対し請願書を出した事実、A村長は被告人に診療所工事を請負わせることが無理であると知りながら、敢てこれを被告人に特命で請負わせ、又被告人に対し安い単価で村有林の特売をなした事実、右特命請負が村会で問題となるやA村長は右請負契約の解約を論議させる協議会を招集しながら、自らはその間出張不在にして被告人を旅館に招き村会の空気を教えて被告人をして右協議会に顔を出させ、工事の促進をはかつた事実、当時被告人はM鉱山及びM村診療所の各工事も請負つていて、その工事代金下金から人夫賃や資材費等を支払つた残りを妻に預けておき、本件Y村へ行く時妻から三万円ないし四万円位持つて行き、一回目二回目はM鉱山の分、三回目はM村診療所の分であつた事実、本件各金員が授受されたとされる日時場所で被告人がA村長と会つていた事実、A村長が被告人から本件三回目の金を贈られたとされる頃から約半歳に亘つて屋根替え及び台所改造工事を行つた事実は、右自白の補強証拠たり得る。

全文

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