裁判例結果詳細

事件番号

昭和34(ナ)4

事件名

裁決変更当選確認請求裁決取消請求事件

裁判年月日

昭和35年3月24日

裁判所名・部

高松高等裁判所 第四部

結果

高裁判例集登載巻・号・頁

第13巻2号197頁

原審裁判所名

原審事件番号

判示事項

一、 市議会議員選挙において最下位当選人の当選を無効とした訴願裁決に対し、次点者から更にその取消を求める訴を提起する利益が認められる場合 二、 公職選挙法第六八条第二号前段の意義 三、 記載の不完全な投票を公職の候補者に対するものと解しうる範囲 四、 公職選挙法第六八条第五号の他事記載の範囲 五、 記載の不完全な投票の効力に関する判定の一事例 六、 他事記載かどうかの判定の一事例 七、 当選訴訟で当選人の確定を求めることの可否

裁判要旨

一、 市議会議員選挙で最下位当選人の当選を無効とする訴願裁決があつても、それが、その者と次点者の得票数が同数であつて選挙会において選挙長がくじで当選人を定めるべきことを理由としたものであるときは、次点者は更に、その者の得票数が自己の得票数よりも少いことを理由として右裁決の取消を求めるため訴を提起する利益を有する。 二、 公職選挙法第六八条第二号前段の「公職の候補者でない者の氏名を記載したもの」とは、投票の記載が公職の候補者の氏名を記載したといえない場合一般をいうのではなく、公職の候補者でない特定の者の氏名を記載したと積極的にいいうる場合をいう。 三、 投票の記載が公職の候補者の氏名に近似する場合において、それが文字を誤記したものとはいえなくても、筆蹟や当該選挙当時の諸般の事情などから、選挙人が該候補者の氏名を誤つて記憶したことによると推断しうる場合は、これを当該候補者に対する投票と認め公職選挙法第六八条の規定に反しないかぎりにおいて有効とすべきである。 四、 公職選挙法第六八条第五号の「他事」の範囲は同法の趣旨、選挙の特質および記載された事柄の性質などに基いて定めるべきである。それは原則としては、記載の大小、濃淡、形状などの程度の如何を問わない。また、それが氏名の一部の形で記載されている場合やその他若干の場合などには本文記載のようにいわゆる有意かどうかを問題とすべきであるが、これらを除いた一般の場合には、いやしくもこれを書くことにつき意識があつて記載したものというべき限りは記載者の意図の如何を問わないと解すべきである。 五、 市議会議員選挙で「中山晴二」と記載された投票は、その選挙の議員候補者のうちで中山清のほかに中山の氏を称する者がなく、晴二の名を称する者もなく、選挙人のうちにも該当者がなく、且つその筆蹟が普通程度のもので別段なげやりな、或は不真面目なものとも認められない以上、これを候補者中山清に投票しようとしたもので名が異つているのは選挙人の誤つた記憶によるものと解するのを相当とする(要旨三参照)。また末尾の「二」は投票の宛先を示すものとしてではなく氏名の一部として記載されているので、右のように作為的なものと認められない以上はこれを公職選挙法第六八条第五号の他事記載とすべきではない(要旨四参照)。 六、 公職の候補者の氏名の記載の右側に「<記載内容は末尾1−(1)添付>」という記載があり、それが不用意に筆具の先端が紙面にふれてできたものではなく意識しながら記載したもので、しかも振仮名ではないと認められる以上は、これを記載した選挙人の意図如何は明らかでなくても公職選挙法第六八条第五号の他事記載とすべきである(要旨四参照)。 七、 市議会議員選挙の当選の効力に関する訴訟において何某を当選人とする旨の裁判を求めることは不適法で許されない。

全文

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添付文書1

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