裁判例結果詳細

事件番号

平成15(行ウ)393等

事件名

退去強制令書発付処分取消等請求事件(甲事件),難民の認定をしない処分取消請求事件(乙事件)

裁判年月日

平成17年12月26日

裁判所名

東京地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 ミャンマー連邦国籍を有する男性が,法務大臣がした出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決は,前記男性が,ミャンマー連邦に送還されれば迫害を受けるおそれがあり,同法等に規定する「難民」に該当するにもかかわらず在留特別許可を認めなかった違法があり,同裁決を前提とする入国管理局主任審査官がした退去強制令書の発付処分も違法であるとしてした前記裁決及び前記処分の各取消請求が,認容された事例 2 ミャンマー連邦国籍を有する男性からの難民認定申請に対し,法務大臣が出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による削除前)61条の2第2項所定の期間経過を理由としてした難民の認定をしない旨の処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

1 ミャンマー連邦国籍を有する男性が,法務大臣がした出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による改正前)49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決は,前記男性が,ミャンマー連邦に送還されれば迫害を受けるおそれがあり,同法等に規定する「難民」に該当するにもかかわらず在留特別許可を認めなかった違法があり,同裁決を前提とする入国管理局主任審査官がした退去強制令書の発付処分も違法であるとしてした前記裁決及び前記処分の各取消請求につき,前記男性は,我が国において,反ミャンマー連邦政府の立場の詩及び評論を執筆し,反政府の立場の雑誌に発表していること,ミャンマー連邦の軍事政権に反対している団体の中央執行委員会のメンバーを務めていたこと,主要国首脳あてに,ミャンマー連邦の民主化への支援と違法な軍事政権に対する行動の要請等を内容とする書簡等を送付していることなどからすれば,ミャンマー連邦政府を批判,非難する政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有していたものと認められ,同法に規定する難民に該当していたところ,前記裁決は,前記の者が同法上の難民に該当するという当然に考慮すべき極めて重要な要素を一切考慮せずに行われたものであることなどから,法務大臣の裁量権の範囲を逸脱する違法な処分であり,前記裁決に従ってされた前記処分も違法であるとして,前記各請求を認容した事例 2 ミャンマー連邦国籍を有する男性からの難民認定申請に対し,法務大臣が出入国管理及び難民認定法(平成16年法律第73号による削除前)61条の2第2項所定の期間経過を理由としてした難民の認定をしない旨の処分の取消請求につき,同項ただし書にいう「やむを得ない事情」とは,所定の期間内に難民認定の申請をする意思を有していた者が,病気,交通の途絶等の客観的な事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合に限らず,本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定することが,出国の経緯,我が国の難民認定制度に対する情報面や心理面における障害の内容と程度,証明書類等の所持の有無,申請者にとっての言語上の障害や申請を援助してくれる者の有無,申請までの期間等を総合的に検討し,当該期間を経過したことに合理的理由があり,入国後又は難民該当性が生じた後速やかに難民としての庇護を求めなかったことが必ずしも難民でないことを事実上推認させるものではない場合をいうとした上,前記の者は,我が国への入国以降,反政府活動に深く関与し続けていたものであることからすると,難民制度一般や,我が国における難民認定制度,あるいは難民認定申請を助けてもらうための組織や弁護士等についても,一般のミャンマー人よりはるかに知識を有していた者と推認するのが相当であり,同項本文かっこ書にいう「その事実を知った日」から3か月ないし5か月間以上難民認定申請をしなかったことに合理的な理由があるとは認められず,同項ただし書の「やむを得ない事情」が存在すると認めることはできないとして,前記請求を棄却した事例

全文

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