裁判例結果詳細

事件番号

平成6(行コ)95

事件名

原子炉設置許可処分取消請求控訴事件(原審・新潟地方裁判所昭和54年(行ウ)第6号,昭和55年(行ウ)第4号,平成5年(行ウ)第3号)

裁判年月日

平成17年11月22日

裁判所名

東京高等裁判所

分野

行政

判示事項

1 設置許可申請に係る原子炉の周辺住民が提起した原子炉設置許可の取消訴訟において,同許可の取消しの理由として主張し得る違法事由の範囲  2 原子炉の設置許可処分後に原子炉施設の変更などの各変更許可処分がなされた場合における審理,判断の対象  3 内閣総理大臣から実用原子炉許可権限を承継した通商産業大臣がした原子力発電所の原子炉設置許可処分が,適法であるとされた事例

裁判要旨

1 設置許可申請に係る原子炉の周辺住民が提起した原子炉設置の許可の取消訴訟において,同許可の取消しの理由として主張し得る違法は,周辺住民の法律上の利益に関係のあるものに限られるところ,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和53年法律第86号による改正前)24条1項3号所定の許可要件のうち技術的能力に係る部分及び同項4号所定の安全性に係る許可要件については,単に公衆の生命,身体の安全等を一般的法益として保護しようとするにとどまらず,原子炉事故がもたらす災害により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全等を個別的利益としても保護する趣旨を含むと解されるから,それらの住民は,これらの許可要件に関する違法事由を原子炉設置許可処分取消理由として主張することができるし,同法23条,同法24条2項は,許可要件に適合することについての内閣総理大臣の判断が適正にされることを担保するために厳格な手続を定めていることからすると,周辺住民らは,実体上の違法をもたらさないことが明白であるものを除き,安全審査の手続上の違法事由も取消理由として主張することができるが,同法24条1項1号,2号及び3号のうち経理的基礎に係る部分の違法事由は,取消理由として主張することはできない。  2 原子炉の設置許可処分後に原子炉施設の変更などの各変更許可処分がなされた場合,これらの変更許可処分は,当該設置許可処分の内容と実質的に同一視し得る等の特段の事情がない限り,当該処分とは別個の行政処分であるから,これら変更許可処分の違法事由は,原子炉設置許可処分の取消訴訟の審理,判断の対象とならない。  3 内閣総理大臣から実用原子炉許可権限を承継した通商産業大臣がした原子力発電所の原子炉設置許可処分につき,前記処分には,手続規定の不備,不明確や安全審査に係る技術的基準の不合理,不明確といった手続的な違法性はなく,また,規制法24条1項3号のうち技術的能力に係る部分所定の要件適合性の判断について,当該事業者に技術的能力を認めた判断には合理的根拠があり,規制法24条1項4号所定の要件適合性の判断について,原子炉施設の安全性の意義とその安全審査のあり方,平常運転時における被ばく低減対策,事故防止対策,地質,地盤及び地震に関係する安全対策,公衆との離隔に係る安全対策といった各項目について,現在の科学技術水準に照らし,当該原子炉施設が要件に適合するとした原子力委員会及び原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があるとは認められないから,これに基づいてした前記許可処分は適法であるとした事例

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