裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
行政事件
- 事件番号
昭和60(行ウ)174
- 事件名
国民年金出張検認手当返還請求事件
- 裁判年月日
昭和63年3月15日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 東京都世田谷区事案決定手続規程(昭和54年世田谷区訓令甲第4号)には4000万円未満の支出については所管課長が支出決定をする旨の定めがあり,同区においては右定めに基づき職員に対する出張検認手当の支出決定を同区役所福祉部国民年金課長が行っていたことにつき,右手続規程は,訓令という形式で区長の権限に属する事務に係る決定権限の合理的配分と決定手続を定めるものであり,当該事務につき区長に権限があることを当然の前提とした上その事務処理の手続,方法を定めているものと解されること,世田谷区において権限の委任がされる場合には,外部に公示される規則という法形式により明確に権限の委任をうたっていること等にかんがみると,右手続規程中の支出決定に関する右定めは,世田谷区長の有する支出負担行為の権限自体を所管課長に外部的にも内部的にも委任しているものではなく,右権限にかかる事務処理を同区長がその補助機関である所管課長に任せることにし,同課長が同区長を補助して執行する旨を定めたものと解すベきであり,同区役所国民年金課長がした右出張検認手当の支出決定も,同課長がその権限行使として行ったものではなく,世田谷区長の有する支出負担行為の権限について,同区長を補助して執行したものということができ,右の支出負担行為の権限は,同区長が補助機関である同課長をいわば手足として用いてこれを行うものであると評価せざるを得ないとした事例 2 国民年金の保険料を納付させる方法が出張検認方式から規則検認方式に切り替わった後において,規則検認方式による事務に従事する職員に対し出張検認手当を支給することを内容とする支出負担行為は,職員の給与に関する条例(昭和26年世田谷区条例第11号)及び職員の特殊勤務手当に関する規則(昭和42年世田谷区規則第11号)に違反しているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,世田谷区長個人に対してされた損害賠償請求が,出張検認手当は,出張検認方式による事務が,危険性,困難性を有することに着目してその事務に従事する職員に支給されるものであるから,出張検認方式による事務とは危険性,困難性において相当低く,質的な差異の存する規則検認方式による事務に従事する者に対して出張検認手当を支給することは,同条例及び同規則によることなく給与を支給するもので,同手当の支給に係る支出負担行為は違法であり,また,世田谷区役所福祉部国民年金課長は,規則検認方式による事務のみが行われ,出張検認方式による事務が行われていないことを十分知っていたことが容易に推認されるので,同課長には違法な右支出負担行為について帰責事由があり,世田谷区長が右支出負担行為の権限の行使を同課長を用いてすることは,世田谷区事案決定手続規程(昭和54年世田谷区訓令甲第4号)にのみ根拠があって,法令上の根拠がないから,同区長は,現実にその手続に関与していなくても,同課長の右責任をそのまま自己の責任として負担しなければならないとして,認容された事例
- 裁判要旨
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