裁判例結果詳細

事件番号

昭和29(あ)502

事件名

賍物故買

裁判年月日

昭和31年3月20日

法廷名

最高裁判所第三小法廷

裁判種別

判決

結果

棄却

判例集等巻・号・頁

刑集 第10巻3号374頁

原審裁判所名

広島高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和28年8月10日

判示事項

一 関税法による通告処分が履行された場合の効力 二 一所為数法にあたらない一事例 ―賍物故買と関税法違反(無免許輸入)― 三 ある犯罪が他の犯罪の予備行為にあたる場合と一所為数法 四 密輸入罪における実行の着手とその予備行為

裁判要旨

一 昭和二九年四月法律第六一号による改正前の関税法第九六条が、「犯則者通告ノ旨ヲ履行シタトキハ同一事件ニ付訴ヲ受クルコトナシ」と定め、右改正後の同法第一三八条第四項が「犯則者は、第一項の通告の旨を履行した場合においては、同一条件について公訴を提起されない。」と定めているのは、通告処分が履行された場合につき、確定判決を経たのと同一の効力を認める趣旨ではなく、従つて、(イ)これに違反して公訴が提起されても、免訴の判決ではなく公訴棄却の判決がなされるべきであり、また、(ロ)「同一事件」というのは、科刑上の一罪関係にある他の罪を含まず、右他の罪については訴追が可能なものと解すべきである。 二 被告人が、港に停泊中の機帆船におもむき、同船機関長甲との間に、同船が沖縄から積んできた貨物の一部で甲らが窃取したものである鉄屑を情を知つて買受け乗つていつた伝馬船にこれを積みこみ、同港の岩壁にいたり、税関の免許を受けないでこれを陸揚した場合、右賍物故買罪と関税法違反(無免許輸入)罪とは、一所為数法の関係にあるものではない。 三 鉄屑買受行為は、あきらかに関税法違反罪の予備行為であるが、単に、ある犯罪が他の犯罪の予備行為の意味をもつからといつて、両者を一所為数法にあたるとすることは、後者の予備罪が罰せられる場合であるかどうかを問わず、正しくない。 四 関税法違反罪(密輸入)は伝馬を岩壁に向つて漕ぎ進めたときに実行に着手したものであつて伝馬に密輸入物資を積みこむ行為はその予備行為である。

参照法条

関税法(昭和29年法律61号による改正前)76条,関税法(昭和29年法律61号による改正前)96条,関税法(昭和29年法律61号による改正後)138条4項,関税法(昭和29年法律61号による改正後)111条,関税法(右改正後)111条,刑法54条,刑法45条,刑法256条2項,刑法43条,刑訴法337条1号,刑訴法338条4号

全文

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