裁判例結果詳細

事件番号

昭和33(あ)1588

事件名

傷害

裁判年月日

昭和37年8月21日

法廷名

最高裁判所第三小法廷

裁判種別

判決

結果

破棄差戻

判例集等巻・号・頁

刑集 第16巻8号1303頁

原審裁判所名

東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和33年7月16日

判示事項

被害者の傷害と死亡との間の因果関係の存否に関する判断に理由不備があつて、刑訴法第四一一条一号にあたるとされた事例。

裁判要旨

被告人から濃硫酸約五合を浴びせかけられ、頭部、顔面、頸部、前胸部、両上下肢等殆んど身体の全部位に治療数ケ月を要する硫酸腐蝕傷を受けた被害者が、入院加療の途上、該硫酸腐蝕傷は八割以上治癒したが結核性胸膜炎を誘発し、これに基づく循環機能不全により死亡するに至つた事案において、原審が、専門医に対し右被害者の受傷の部位、程度、治療の経過、治療中の健康状態等について具体的に何ら示すところがなく、単に「硫酸腐蝕傷を受けた患者がその症痕形成において約八割以上治癒した場合右受傷に基因して結核性胸膜炎による循環機能不全を発病する場合ありや」との鑑定を求め、その鑑定結果は「硫酸腐蝕傷を受けた者が結核性胸膜炎にかかり循環機能不全をおこすことは極めて稀れである」との一般的判断のみを示したに止まるにも拘わらず、他に特段の事由を説示することなく、右鑑定結果だけで、被害者の傷害と死亡との間に因果関係がないと判断したのは、証拠理由不備の違法があり、刑訴第四一一条第一号により破棄を免かれない。

参照法条

刑法205条1項,刑訴法44条1項,刑訴法335条1項,刑訴法411条1号

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