裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和27(あ)801
- 事件名
恐喝
- 裁判年月日
昭和28年7月18日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第7巻7号1547頁
- 原審裁判所名
名古屋高等裁判所 金沢支部
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和26年12月28日
- 判示事項
一 恐喝罪の起訴状に、恐喝手段が正当な権利の行使にあたらないことを示す為に被告人の所為を記載することと刑訴法第二五六条第六項 二 刑訴第四七条本文の注意 三 刑訴第四七条但書にあたる一事例 四 控訴審における刑訴第三九三条但書による事実取調のための証人尋問請求却下の当否
- 裁判要旨
一 所論は、要するに恐喝罪にかかる本件起訴状の前段記載に「被告人は…塩酸キニーネ一壜(約百五十瓦在中)価格約千円位のものを五万円の塩酸モルヒネと言う高価な薬だと偽つて売却方を依頼した如く見せかけた後」とあるのを指摘し、かかる記載は裁判官に事件に付予断を生ぜしめる虞のある事項にあたり、本件起訴は無効であるというのである。しかしながら本件の場合恐喝手段が正当な権利の行使にあたらないことを示すために本件起訴状に所論指摘のような記載をしても違法ということはできない。 二 刑訴第四七条本文は訴訟に関する書類が公判開廷前に公開されることによつて訴訟関係人の名誉を毀損し、公序良俗を害し、または裁判に対する不当な影響を引き起すことを防止するための規定である。 三 検察官が公訴の提起という本来の職務を行うために、その保管にかかり、捜査中の他の被疑事件記録中の書類から知得した事実を起訴状の公訴事実のなかに公訴の提起に必要なかぎり記載してこれを公にすることは、刑訴第四七条但書にあたるものと解すべきである。 四 仮りにこの原審における証人尋問の請求が刑訴三九三条但書前段の要件を具備するとしても、なおその証人を取り調べることが但書後段の要件を具備しこれを取り調べる必要のある場合にあたるかどうかは、結局原審の判断によつて決せられる事項であるから、原審が弁護人の請求の理由と、すでに取り調べた事実と証拠とを合せて考えた上、右証人を取り調べなければならない場合に当らないものとして却下したことはなんら違法ということはできない。
- 参照法条
刑法249条,刑訴法256条6項,刑訴法47条,刑訴法256条,刑訴法393条,刑訴規則164条
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