裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和24(れ)1601
- 事件名
強制脅迫、住居侵入
- 裁判年月日
昭和25年10月11日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第4巻10号2012頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和24年4月27日
- 判示事項
一 家宅捜索について居住者の不任意の承諾と住居侵入罪 二 予審制度廃止以前に作成された予審訊問調書の証拠能力 三 目的の正否と公共の福祉 四 憲法第二八条にいわゆる団結権等の意義 五 権限を有しない者の隠匿物資摘発行為と違法性阻却の理由
- 裁判要旨
一 A市長夫人Bが被告人C等に対して家宅捜索の承諾を与えたのは、赤旗を擁した多数の威力を背景とする同人等の言動に威圧されたためであつて、その真意から出たものでないことをCも知つていたことは、原判決挙示の各証拠就中Dに対する予審判事の証人訊問調書中同人の供述記載によつて十分に推認することができる。それ故に原判決には所論のように証拠によらずしてCの犯意を認定したという違法はない。 二 予審制度は現在廃止せられているけれども、その廃止以前に適法に作成された予審訊問調書が証拠能力を有することは、当裁判所の判例(昭和二二年れ第三一九号同二四年五月一八日大法廷判決)の趣旨とするところである。 三 市民のため食糧を獲得すること又は市長や食糧営団の職員に反省を促すことが目的として正しいとしても、それだけでその目的を達成するための手段がすべて正当化される訳ではない。その手段は秩序を守りつゝ個人の自由や権利を侵さないように行われなければならない。けだし秩序が維持されることも個人の基本的人権が尊重されることもそれ自体が公共の福祉の内容を成すものだからである。それ故に原判決が被告人等の所為を公共の福祉に反するものとし、正常の行為に非ずと断じたのは当然である。 四 憲法第二八条にいわゆる団結権、団体交渉権等は、単なる一般市民の集合には適用されない。 五 仮りに所論のように、当局者が隠匿摘発物資の励行を怠つていたとしても、本件被告人がしたような方法(赤旗を擁した多数の威力を背景として家宅捜索の承諾を得た)によつてこれを摘発することが不当であつて、違法性阻却の事由とならないことは当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第三一九号同二四年五月一八日大法廷判決)に徴して明らかである。
- 参照法条
刑法130条,刑法第1編第7章(犯罪ノ不成立及ビ刑ノ減免),刑法35条,旧刑訴法300条,刑訴応急措置法9条,憲法12条,憲法13条,憲法28条