裁判例結果詳細

事件番号

昭和24(れ)2967

事件名

窃盗、物価統制令違反

裁判年月日

昭和25年9月29日

法廷名

最高裁判所第二小法廷

裁判種別

判決

結果

その他

判例集等巻・号・頁

刑集 第4巻9号1831頁

原審裁判所名

札幌高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和24年6月24日

判示事項

一 事實認定が實驗則に違反する一例 二 いわゆる自給塩の讓渡と自給塩を讓り受けた者が更にこれを轉賣する場合の統制額

裁判要旨

一 原判決の事實摘示と證據説明を對照して判斷すると原判決は被告人A等がB及びC炭坑へ列車を運轉して往つた際機關車に焚く石炭が不足したので山元において、緊急措置としてテンダーに石炭を補給して貰つたのであるが、そのため業務終つてD機關區に歸つたところ、テンダーになお石炭の残餘があつたので、これを擅に取り下し、處分した事實を認定すると共に、他方において當時被告人A等はその運轉して往つた機關車のテンダーに約六〇頓の石炭を積んでいつたもので、山元においてはなお三〇頓前後の石炭が残つていたものと推認した上、論旨摘録の如き混和の理論により山元で補給された石炭の所有權は全部運輸省に歸屬したものとなし、從つて、判示石炭の全部又は一部が被告人の辯解の如く、山元で補給された石炭であると否とを問はず、これを前記の如く、擅に取出し處分した以上判示の如く運輸省所有の石炭を窃取したことになると認定した趣旨であることがわかる。しかし、我が國に現存する國鐡使用のテンダーの石炭積載量 その最大のもので、約一二頓であり、北海道の炭鑛方面において使用されるものは、遙かにそれ以下のものであることは公知の事實である。從つて、原判決が本件機關車のテンダーの石炭積載量及び前記山元における残量をそれぞれ六〇頓及び三〇頓内外であると推認し、これを基礎として論旨摘録の如き混和の理論により山元で補給された石炭の所有權は全部運輸省に歸屬したものと判示したことはその根據において、實驗に反則するものと云わなければならない。 二 いわゆる自給塩とは塩專賣臨時特例(昭和二〇年一二月二九日勅令第七二九號)によつて、一般にその製造を許されたものであつて、右特例第三條により之を所有し、所持し、費消し又は讓渡することができるのであるが、それは専ら自給用に供せしめる趣旨であるから讓渡に關しては特に「命令に定めるところに依り」との制限が置かれており塩専專賣法臨時特例施行規則(前同日大藏省令第一一五號)第三條には自給塩の讓渡はそれを製造したものがその製造した塩に限り、讓渡することを得る旨規定されているに止まり、讓渡を受けたものが更にこれを轉賣することは許されていない。しかも製造者と雖も、その製造した自給塩を讓渡するにあたつては所轄專賣官署において、讓渡先、數量、價格其の他讓渡に關し爲すことであるべき必要な指示に從わねばならぬことになつている。從つて自給塩と雖も、讓受人が更にこれを他に轉賣したり、生産者が所轄專賣官署の指示に反して讓渡することは許されない。從つて、かかる場合のため特に統制額が定められていないことは固より所論のとおりである。さればこそ自給塩を讓り受けた者が更に違法にこれを轉賣する場合においては(自給塩を製造した者が自ら讓渡する場合は暫く措き)塩專賣法及び塩賣捌規則の定める販賣價額がその統制額となるものと云わなければならない。

参照法条

舊刑訴法336條,舊刑訴法337條,塩専賣臨時特定(昭和20年12月29日勅令729號)2條3條物價統制令(昭和24年5月31日法律164號による改正前のもの)7條,物價統制令施行規則(昭和24年5月31日総理庁令28號による改正前のもの)8條

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