裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和25(れ)1856
- 事件名
傷害致死、死体損壊
- 裁判年月日
昭和26年3月9日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第5巻4号500頁
- 原審裁判所名
名古屋高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和25年10月18日
- 判示事項
正当防衛にあたる事例
- 裁判要旨
しかし、原判決の確定したところによると、被告人は朝鮮人AことBが開墾地内から薪木を窃取して帰るのを見て、同人に対し「そんなに薪木を持つて行つたら困るではないか」と申し向けたところ、同人は「なにつ」と言い乍ら杖にしていた長さ約四尺、直径約二寸五分の雑木の生木をもつて打ち掛つてきたので、之を奪い取つた折柄、同人がなおも素手で自己に組付こうとする気勢を示した為、同人の頭部を右生木をもつて一回殴打して傷害を加え因て同人をしてその頃同所において死亡するに至らしめたというのであつて、右のように生木をもつて打ち掛つてきた本件被告者が生木を奪い取られてもなお素手で組付こうとする気勢を示したことは特段の事情のないかぎり急迫不正の侵害があつたものといわなければならない。従つてこの場合被告人が自己の権利を防衛するため反撃に出ることも己むを得ないところであり、反撃行為として奪い取つた生木で相手方を殴打することも防衛行為として己むを得ない場合もあり得るのである。記録によると本件被害者は共謀な朝鮮人であるという噂のある人物で、背は被告人より一寸高く四角張つた身体つきで、獰猛な人相をしており、被告人のような者が二人がかりでかかつても素手では到底かなわないと思われるような男であつたことが判る。そして被告人は被害者と間近かに相対していたので相手に組付かれては大変だと思つたので奪い取つた生木で相手の殴つたというのであるから、特段の事情のないかぎり被告人の防衛行為は正当防衛に該当するものといわなければならない。
- 参照法条
刑法36条1項
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