裁判例結果詳細
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最高裁判所
- 事件番号
昭和25(れ)946
- 事件名
殺人、同未遂
- 裁判年月日
昭和25年8月9日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第4巻8号1562頁
- 原審裁判所名
福岡高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和25年3月9日
- 判示事項
一 拘禁後一六〇日乃至一七三日後の自白であつても不當に長い拘禁後の自白にあたらない事例 二 共謀共同正犯の殺人罪及び殺人未遂罪の連續犯にあたる罪につき刑法第五四條第一項前段を適用した判決の正否 三 「場合によつては」或は「成行によつては」相手方を殺傷するも止むを得ないとの決意と殺人罪の犯意
- 裁判要旨
一 原判決が相被告人甲に對する檢事の昭和二三年四月一三日、一四日、一五日附の各聽取書の供述記載及び相被告人乙に對する檢事の昭和二三年四月六日附聽取書の供述記載を證據としたこと、右甲乙は何れも昭和二二年一〇月二四日逮捕せられ、同月二七日勾留状を發せられたもので、右逮捕以來甲が昭和二三年四月一三日附聽取書の供述をする迄に約一七三日間乙が同人の右聽取書の供述をする迄に約一六〇日間拘禁されていたこと、及び甲乙の右各聽取書には、右兩名等が被告人Aと殺害行爲を共謀たし旨の右兩名各自の犯罪行爲に關する自白の供述が記載されていることは所論のとおりである。しかし、本件記録に微すれば本件は、彼此双方多人數が敵味方に別れ相鬪爭したいわゆる博徒の喧嘩にかゝる事案であり、第一審では五名の者が被告人として起訴され關係人もその數多く、しかも甲乙等は、逮捕當初は極力本件犯行は右兩名のみの犯行であると主張し、いわゆる親分たる被告人Aとの共犯であることを秘匿しようとつとめていた經過が明らかであるから、かゝる事案において、檢察官が事案の眞相を明らかにするためには、相當の日數を要するものといわなければならないので拘禁後一六〇日乃至一七三日後の自白といえども必ずしも、刑訴應急措置法第一〇條第二項にいわゆる不當に長い拘禁後の自白であるとはいえない(昭和二四年(れ)第二三六五號同年一二月三日第二小法廷判決參照)してみれば所論各聽取書の供述を證據とした原判決には何等違法はない、論旨は理由がない 二 共謀による共同正犯は、數人共同一体となり相互に手足となり共同の目的を遂行するものであるから、その一人から観察すると、他の共犯者の行爲も、亦自己の行爲と同視すべきものである。從つて數人共謀して、各自同一機會に夫々各別個の人を殺害し、又は殺害しようとして遂げなかつたときは、その共犯者の一人について見れば自己の時を接した數個の行爲により同一機會に數名の各別の人を殺害し或は殺害しようとして遂げなかつた場合と同視すべきであるから刑法第五五條の適用のあつた本件犯行當時においては殺人罪及び殺人未遂罪の一つの連續犯を構成するものと解するのを相當とする、してみればこれを一個の行爲で數個の殺人罪及び殺人未遂罪の罪名に觸れるものとした原判決は失當であるけれども原判決も、本件被告人の行爲を結局一罪として處斷しているのであつて、被告人の利害に何等影響を及ぼさないから原判決を破棄する理由とならない。 三 被告人が、「場合によつては殺傷沙汰に及ぶも止むなしと決意し」、又は、「成行によつては相手方を殺傷することも辞せざる意図の下に」、殺害行爲に出たとの判示は、被告人等に殺人罪の犯意があつたことを判示したものである。
- 参照法条
憲法38條2項,刑訴應急措置法10條2項,刑法55條(削除前),刑法60條,刑法54條1項,刑法199條,刑法203條
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