裁判例結果詳細

事件番号

昭和23(れ)1197

事件名

有毒飲食物等取締令違反

裁判年月日

昭和24年2月22日

法廷名

最高裁判所第三小法廷

裁判種別

判決

結果

破棄差戻

判例集等巻・号・頁

刑集 第3巻2号206頁

原審裁判所名

福岡高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和23年3月16日

判示事項

一 メタノール含有物につき身體に有害であるかも知れないと思つただけである場合と未必の故意 二 共同購入したメタノールを一人が所持販賣した場合と共同正犯の成否 三 一立方セチメートル中約〇、二グラム強のメタノールを含有する液體を單にメタノールと表示した判決の違法性 四 有毒飲食物等取締令の適用と刑法第六條

裁判要旨

一 該品物がメタノールであるとのはつきりした認識なく、ただ身體に有害であるかも知れないと思つただけで有毒飲食物等取締令第一條違反の犯罪に對する未必の故意ありとはいい得ない。 二 原判決の認定した事實によれば被告人が原審相被告人等と本件メタノールを共同して購入したことは明らかであるが、本件メタノールを所持した事實及び販賣した事實は、被告人の單獨行爲であつて原審相被告人と共同行為でないことは明らかである従つて荼判決において被告人の判示所爲に對し刑法第六〇條を適用し相被告人等の行爲についてもまた共同正犯として責を負はしめたことは、錠律に錯誤があると主張する論旨は、理由がある。 三 原判決舉示の鑑定人Aの鑑定書によれば本件液體中に含有するメタノールは一立方セチメートル中約〇、二グラム強であることは明らかである。しかるに原判決は被告人が所持し、且つ販賣した液體は一立方チメートル中約〇、二グラム強のメタノールンを含有する液體であることを明確にしないで、單にメタノールと記載しているので、本件液體は全液悉く純粹のメタノールであると思はしめる表示方法をとつたことは所論の通りである。判文を通読すれば判文の趣旨は右鑑定人Aの作成した鑑定書記載同様のメタノール含有液を所持し且つ販賣した事實を判示するつもりであつたであろうことを推測することは必ずしも不可能とはいえないが正確を期すべき判示方法としては不完全であつて、論旨の如き主張をなし得るものであるから、本論旨もまた理由ありといはなければならない。 四 昭和二一年勅令第五二號による改正前の有毒飲食物等取締令の規定が故意犯のみを處罰することとなつているに反し、改正後の同令は過失犯をも處罰することとなつており且つ改正前と異り刑法第六六條の適用を廢除している等の點に鑑みるときは、改正前の同令よりも厳罰主義をとつたものと言はなければならないばかりでなく改正後の同令の刑は改正前の刑よりも輕くなつたと見るべき點は少しもない。然るに原判決は改正前と改正後における刑の比較をもなさずして漫然改正後の同令を適用したことは擬律に錯誤があるといわなければならない。もつとも改正後の同令第四條第三項によれば刑法第六六條を廢除したにかかわらず原判決は原審相被告人に對し刑法第六六條を適用している點から見れば、原審においては改正前の同令を適用したものではないかとの疑もおきるのであるが、判文は明らかに昭和二一年勅令第五二號有毒飲食物等取締令第四条第一項前段(改正前の同條第一項には前段、後段の區別はない)と記載しているので、改正後の同勅令を適用したものであるトルと言はざるを得ない。

参照法条

有毒飲食物等取締令1條,刑法38條,刑法60條,刑法6條,刑法66條,舊刑訴法360條1項,昭和21年勅令52号有毒飲食物等取締令4條1項,昭和21年勅令325号有毒飲食物等取締令4條1項,昭和21年勅令325号有毒飲食物等取締令4條3項

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