裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和23(れ)1862
- 事件名
昭和二二年勅令第一号違反
- 裁判年月日
昭和24年6月13日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第3巻7号974頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年11月25日
- 判示事項
一 覺書該當者としても假指定の効力と日本裁判所の審判權の有無 二 昭和二二年閣令、内務省令第一號第五條第一項の「本人に通知」する遑がなく官報に掲載した場合その通知の効力につき日本の裁判所の審判權の有無 三 覺書該當者の「政治上の活動」の意義と昭和二二年勅令第一號第一二條第一五條第一項 四 覺書該當者の政治上の活動と經濟上又は社會上の活動の區別 五 昭和二二年勅令第一號第七條の三第四項の「みなす」の規定と人權蹂躙 六 連合国側の正当な要求と裁判官に対する法的要請 七 雜誌の主宰者である被告人を雜誌社の役職員に就いたものと認定したことの正否
- 裁判要旨
一 本件被告人を覺書該當者として假指定したことが、中央公職適否審査委員會又は内閣總理大臣の錯誤にもとずいてなされたか否か、從つてそれが無効であるか否かを審判することの權限は、日本の裁判所に屬しない。 二 正當の權限を有する内閣總理大臣が、昭和二二年閣令内務省令第一號第五條第一項の解釋として、本件被告人を假指定したときのように多數の該當者の住所を一々確かめて通知を發する遑のなかつた場合は、住所を知ることができない場合にあたり、從つて官報に掲載してこれを行うことができるものと認めて、そうしたのである以上、日本の裁判所がこれを審判しても無効とすることはできない。 三 ここにいう「政治上の活動」とは、原則として政府、地方公共團體、政黨その他の政治團體又は公職に在る者の政治上の主義、綱領、施策又は活動の企畫、決定に參與し、これを推進し支持し若しくはこれに反對し、あるいは公職の候補者を推薦し支持し若しくはこれに反對しあるいは日本國と諸國との關係に關し論議すること等によつて、現實の政治に影響を與えると認められるような行動をすることを云うものと解するを相當とする。そして、その中公職に在る者に對する關係は第一二條に定める部分は同條により、その他の部分はここにいう政治上の活動として第一五條第一項により、禁止されているものと解すべきである。 四 覺書該當者は、現在においては「政治上の活動」を禁止されているが經濟上又は社會上の活動は、往々にして政治上の活動と結びつき重なり合つてその間嚴格に區別を立て難い場合があることは勿論であるが、純然たる經濟上又は社會上の活動及び環境と事情に照らし經濟上又は社會上の活動と認められる行動は禁止の對象となつていないものと云うべきである。 五 論旨は、昭和二二年勅令第一號第七條の三第四項に於ける「みなす」という規定を以て人權を蹂躙するものとして非難しているが同條によれば、假指定を受けた者は三〇日以内に異議の申立をすることを許され、異議の申立についてはこれを正式に審査した上覺書該當の指定又は非該當の確認をするが、異議の申立をしない場合には、三一日目において本指定を受けたものとみなす。即ちその以後法律上は本指定を受けた者と同様の取扱を受けるというのであるから、所論のような不當な點はない。 六 裁判官が連合国側の正当な要求に従うべきことは、ポツダム宣言の受諾にもとずく当然の法的要請である。 七 ある雜誌を主宰するということは、その地位の名儀如何に拘わらず實質上はその雜誌を發行する雜誌社の役職員たる義務に從事することであるから、原判決が被告人を雜誌社の役職員に就いたものと認定したことは相當である。
- 参照法条
昭和22年勅令1號,昭和22年勅令1號12條,昭和22年勅令15條1項,昭和22年勅令7條3,昭和22年勅令1號14條,昭和22年閣令内務省令1號5條1項,昭和20年勅令542号(「ポツダム宣言ノ受諾ニ伴イ発スル命令ニ関スル件)