裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和23(れ)77
- 事件名
殺人、同未遂
- 裁判年月日
昭和24年5月18日
- 法廷名
最高裁判所大法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第3巻6号734頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和22年7月21日
- 判示事項
一 共同審理を受けていない共犯者の供述の證據能力 二 共同審理を受けた共同被告人の供述の證據能力 三 自白と補強證據 四 前科についての判示事實と證據の間に多少の差異ある場合と上告理由 五 公判廷での証言と同証人に対する検事の聴取書の記載が異る場合における証拠収捨の理由判示の要否
- 裁判要旨
一 共同審理を受けていない單なる共犯者の供述は、各具體的事件について自由心證上の證據價値の評價判斷の異るべきは當然であるが、ただ共犯者たるの一事をもつて完全な獨立の證據能力を缺くものと認むべき何等實質上の理由はない。また、かく解すべき何等法令上の根據も存在しないのである。憲法第三八條第三項及び刑訴應急措置法第一〇條第三項の規定を援引して、かかる解釋を主張することも是認するを得ない。 二 共同審理を受けた共同被告人の供述は、それぞれ被告人の供述たる性質を有するものであつてそれだけでは完全な獨立の證據能力を有しない、いわば半證據能力(ハーフ、プルーフ)を有するに過ぎざるもので、他の補強證據を待つてこゝにはじめて完全な獨立の證據能力を具有するに至るのである。しかし、その補強證據は、必ずしも常に完全な獨立の證據能力を有するものだけに限る必要はない。半證據能力の證據を補強するに半證據能力の證據をもつてし、合せてこゝに完全な獨立の證據能力を形成することも許されていいわけである。されば、ある被告人の供述(自白)を共同被告人の供述(自白)をもつて補強しても、完全な獨立の證據能力を認め得ると言わねばならぬ。 三 被告人の自白と、補強證據と相待つて全体として犯罪構成要件たる事實を認定し得られる場合においては、必ずしも被告人の自白の各部分につき一々補強證據を要するものとは考えられない。のみならず、本件においては前段説明のとおり被告人の自白は、共犯者及び共同被告人の供述その他原判決舉示の諸證據によつて十分補強されていることが肯認されるのである。論旨はそれ故にすべて採用することを得ない。 四 被告人の前科は、法律上刑の加重原由たる事實であつて、判決主文の因て生ずる理由として判決において必ずこれを認定判示するを要するけれども、元來罪となるべき事實ではないから、必ずしも、證據によりこれを認めた理由を示す必要はなく、また證據によりこれを認めるにも被告人の供述によることなく一件記録中の適當な資料(本件においては被告人の原籍調書)により認定するを妨ぐるものではない。それ故前科の刑の言渡又は確定の日時につき判示したところとこれを認めた證據との間に多少の差異があつてもその證據によつて前科としての要件を認めるに妨げなく、却つて記録中の他の證據によりその日時を確實に肯認し得られるような場合には、その證據上の欠點は判決に影響を及ぼさないものと見るのが相當である。 五 検事の聴取書の供述者が証人として公判廷でした供述が聴取書に記載されたところと異る場合でも、右の証言を排斥して聴取書を罪証に供するについて必ずしもその証拠取捨の理由を判示する必要はない。
- 参照法条
憲法38條3項,刑訴應急措置法10條3項,舊刑訴337條,舊刑訴法337條,舊刑訴法360條1項,舊刑訴法336條,旧刑訴法337条,旧刑訴法360条