裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和24(れ)1681
- 事件名
物価統制令違反
- 裁判年月日
昭和26年9月4日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第5巻10号1835頁
- 原審裁判所名
名古屋高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和24年4月22日
- 判示事項
一 昭和二一年二月食糧緊急措置令の効力と昭和二二年法律第七二号第一条にいわゆる「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令」 二 物価庁告示で指定された統制額を超えて押麦を買い入れた所為の擬律 三 紡績会社がその工員の食糧を購入することと物価統制令第一一条但書
- 裁判要旨
一 所論水産物統制令及び右勅令を廃止した政令は、いずれも食品緊急措置令(昭和二一年二月一七日勅令第八六号)第九条の委任に基いて制定された法令である。そして、右食糧緊急措置令は、九憲法第八条第一項の規定によるいわゆる緊急勅令であつて議会の承諾を得て法律と同一の効力を有するに至つたものであり、かかる緊急勅令の効力が日本国憲法の施行によつて何らの影響を受くべきものでないことは当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第二七四九号同二五年四月一三日第一小法廷判決)とするところである。そして、右の緊急勅令及びその委任に基き制定された勅令勅令並びに政令は所論日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の効力等に関する法律第一条に定める命令に包含されるものではないから、所論のようにその効力を失つたものではない。 二 原判決の確定した昭和二二年一二月四日頃における押麦の売買の基準価格は昭和二二年一一月一日物価庁告示第九六一号によつて規定されたものであり、その告示による統制価格の指定は物価統制令第四条の規定に基くものであつて食糧管理法に基き指定された価格は存しないのであるから、本件価格違反行為は物価統制令違反の問題であつて、所論のごとく食糧管理法違反を以て論ずべきでない。 三 物価統制令第一一条が、「契約ヲ為スコトガ自己ノ業務ニ属スル」場合を「営利ノ目的ヲ以テ契約ヲ為ス」場合と同様処罰する所以は両者共に多量の物について何回も反覆して行われる傾向があり物価秩序を紊す危険が多いからである。この趣旨に鑑みれば同条但書にいわゆる「当該契約ヲ為スコトガ自己ノ業務ニ属スル」とは自己本来の業務として該契約をする場合だけに限らず自己本来の業務の遂行上必要であるつて通常付随的に行われる契約のようなものを包含すると解すべきである。そして本件において、被告人が原判決判示の押麦三〇俵(一俵五〇瓩入)を買受ける契約をしたのは、被告人がA紡績株式会社の用度係として、同会社工場寄宿舎の工員の食料に供するためであつたというのであるが現今紡績業を営む会社が工員の為め寄宿舎を設けることは殆ど必要を欠くべからざるものであるからその寄宿舎に収容する工員の食料を購入することはその紡績業を遂行するため必要であつて通常これに付随して行われるものと解するを相当とする。
- 参照法条
昭和21年2月17日勅令86号食糧措置令9条,昭和22年法律72号1条(日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する),物価統制令3条,物価統制令4条,物価統制令11条,昭和22年11月1日物価庁告示961号,食糧管理法(昭和22年法律247号による改正前のもの)10条,食糧管理法施行令(昭和22年政令330号による改正前のもの)12条
- 全文