裁判例結果詳細

事件番号

昭和34(れ)2

事件名

贈賄、経済関係罰則の整備に関する法律違反

裁判年月日

昭和37年4月13日

法廷名

最高裁判所第二小法廷

裁判種別

判決

結果

破棄自判

判例集等巻・号・頁

集刑 第141号789頁

原審裁判所名

東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和33年11月17日

判示事項

一 賄賂供与申込罪の成立と相手方の賄賂たることの認識の要否 二 証拠により認定した事実を他の事実の証拠とすることの適否 三 刑訴法第四一一条第二号に該当し、刑の執行を猶予するのが相当であるとした事例

裁判要旨

一 賄賂供与申込罪の成立には、相手方に賄賂たることを認識し得べき事情の下に金銭その他の利益の収受を促す意思表示をなせば足りるのであつて、相手方において実際上その意思表示を又はその利益が賄賂たる性質を具有することを認識すると否とは、同罪の成立に影響を及ぼすものではない。 二 証拠によつて認定した或る事実を他の事実の証拠としても、少しも違法ではない(昭和九年(れ)第一五六八号同一〇年二月一四日大審院判決、刑集一四巻九二頁参照)。 三 職権により調査するに原判決の判示するところによれば、被告人の本件利益贈与ないし利益提供の動機としては、相手方の職務行為に対する依頼又は謝礼の趣旨のほかに、多かれ少なかれ、それ以外の個人的な友交関係、政治献金、職務に関係のない個人的将来の庇護期待等の趣旨も認められ、必ずしも職務要因のみに基くものというような状況であつたとは認められないとし、また食糧事情が急迫していた当時の状況下においては被告人の右各贈与は犯情として被告人に有利なものを含んでいたとも認定している。そして被告人は逮捕拘禁以来約一四年の長期に亘り心身に有形無形の多大の苦痛を受けたものというべく、また被告人が反省謹慎の日を送りつつあることは一審判決の判示の趣旨からも窺知しうるところである。本件は当時いわゆるA事件として世人の耳目を聳動せしめた大事件であるが、その後の推移はA事件のB関係においては、収賄罪で起訴されたC、Dは無罪、E、F外五名は執行猶予となつている。叙上の諸事情(判文参照)を考慮するときは、被告人Bに対し実刑を科さなければ刑政の目的を達することができないものとは断じ難く、刑の執行を猶予するのが相当である。

参照法条

刑法198条,刑法25条1項,経済関係罰則の整備に官する法律5条,旧刑訴法336条,旧刑訴法360条1項,刑訴法317条,刑訴法335条1項,刑訴法411条2号

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