裁判例結果詳細

事件番号

昭和22(れ)219

事件名

強姦致傷、強盗致傷

裁判年月日

昭和23年6月23日

法廷名

最高裁判所大法廷

裁判種別

判決

結果

棄却

判例集等巻・号・頁

刑集 第2巻7号680頁

原審裁判所名

広島高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和22年10月7日

判示事項

一 公判の公開と公判調書の記載 二 公開禁止の決定の効力 三 裁判官が「合議の上」裁判の公開を禁止した旨の公判調書の記載と憲法第八二條 四 強盗行爲に對し必死に反抗中の被害者から腕時計を奪取した行爲と強盗罪の成立

裁判要旨

一 判決宣告期日の公判調書に、公開を禁じた旨の記載がない限り、判決の宣告は、公開法廷で行われたものと認めることができる。 二 審理が風俗を害する虞があるとして、裁判所が公判の公開を禁じた場合には、その公開禁止の効力は、結審後の判決宣告期日の公判には及ばないものと解すべきである。 三 裁判が公開の法廷において公正な裁判所によつてなさるべきことは所論のごとく憲法の明定するところである。ただ公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある場合には、裁判官の全員一致で對審を公開しないで行うことができることは、憲法第八二條第二項の定めているところである。そして、本件記録を調査すると(イ)所論のように「裁判長は合議の上爾後の審理は風俗を害する虞あるにより公開を禁止する旨を告げ非公開とした」との記載が昭和二二年九月三〇日の公判調書に明記されている。かくとごとく裁判所が非公開で審理をした場合には「裁判官の全員一致で」公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決定した旨を明確な表現で調書に記載しておくことが大切である。そこで本件調書に「合議の上」風俗を害する虞あるにより公開を禁止した旨を告げ非公開としたとの記載は嚴格にいえば稍不正確の嫌があるがしかしなお裁判所法にいわゆる評議を經て裁判官全員の意見が合致して非公開を決定したものと認め得るのである強いて所論のように評議の結果多數決をもつて公開を禁止したものと解すべき根據は全記録の何處にも見當らない。 四 判決宣告期日の公判調書に公開を禁じた旨の記載がない限り判決の宣告は、公開法廷で行われたものを認むべきである。 五 論旨は被害者が強姦行爲に對し力一杯反抗した證據と被害者が畏怖し抗拒不能となつているのに乘じて右手の腕時計をもぎ取つて強取した犯罪事實との間は重要な齟齬があるというのであるが、本件被害者は「ぐずぐずしておれば強姦され私の一生は臺無にされると思い私は力一杯の元氣を出して反抗しました處相手は私に馬乘りになつた儘左手にはめていた腕時計をもぎ取り」し旨を供述しているのであつて、婦人が強姦に對し本能的に強く反抗したからといつて前記状態において畏怖を感じ腕時計の強奪に對し抗拒不能であつたと原審が認定したことは常識上むしろ當然であつて毫も所論のような齟齬を存在しない。

参照法条

刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑訴法410条7号,憲法82条,刑訴法60条2項4号,刑訴法64条,刑法177条,刑法236条

全文

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添付文書1

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