裁判例結果詳細

事件番号

昭和22(れ)245

事件名

汽車往来危険破壊

裁判年月日

昭和23年6月9日

法廷名

最高裁判所大法廷

裁判種別

判決

結果

棄却

判例集等巻・号・頁

集刑 第2号381頁

原審裁判所名

広島高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和22年10月7日

判示事項

一 刑訴第四一〇條第一三號の規定の意義 二 證據調の申請却下と憲法違反 三 證據調の請求を却下する決定の方式

裁判要旨

一 刑訴第四一〇條第一三號にいわゆる「法律ニ依リ公判ニ於テ取調フヘキ證據ノ取調ヲ爲サザリシトキ」とは、例えば同法第三四二條のように、特に法律の明文をもつて公判廷において取調ぶべきことを規定している場合に裁判所がその取調をしなかつたときを指すものである。從つて、本件のごとく公判廷でなされた證人申請及び鑑定申請を事案の審理に必要なきものと認めて却下した場合は、これに該當しない。 二 (證據調の申請を却下するは憲法違反であるとの上告論旨に對し)憲法が基本的人權の尊重を保障していること從つてあらゆる國家機關がその尊重に留意すべきことは、まさに論旨の言うとおりである。しかし、犯罪を犯した者は、これに相應する刑罰制裁を受けなければならないこともまた當然である。原判決によれば被告人は「長さ一尺四寸、幅七寸厚さ五寸位の石を被告人二人で線路に運び之を軌條の上に倒しかけて乗せた」のであり、かかる行爲から汽車破壊という結果の生ずべきことは實驗法則上容易に認め得られるところである。それ故被告人は現實に生じた汽車破壊という結果に對して刑責を負わなければならぬ。辯護人は若し前照燈が點火されていたならば、本件の障害物は發見し得られ、急停車の處置がとられ、障害物に衝突することなく、汽車の破壊という結果は生じなかつたであろうと主張して、これに關する證人訊問及び鑑定申請を重要であると論ずるのである。しかし、かかる民法不法行爲による損害賠償における過失相殺の理論に似た主張は、刑法の罪責には全く妥當しない。被告人の行爲と汽車と汽車破壊という結果との間に前記一連の事實の介入の可能性の有無乃至程度は、すでに現實に發生した本件結果に對する被告人の刑事責任にとつては風馬牛相關せざるところである。されば、本件證人訊問及び鑑定の申請を必要なしとして却下した原審の處置は、何等憲法に違反するところはない。論旨は理由なきものである。 三 所論辯護人の證據調の請求に對し、原審公判調書において「裁判長は合議の上右證據は何れも取調の必要なきものと認めて却下すと告げた」旨記載されているのは、裁判長が證據調の請求を却下する旨の決定を言渡した趣旨に他ならないから、これをもつて公判においてなした證據調の請求につき決定をしなかつたものであると言う論旨は當を得ない。

参照法条

刑訴法410條13號,刑訴法344條1項,憲法11條,憲法37條2項

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