裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和23(れ)1270
- 事件名
傷害、恐喝
- 裁判年月日
昭和24年1月27日
- 法廷名
最高裁判所第一小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄差戻
- 判例集等巻・号・頁
集刑 第7号109頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年6月22日
- 判示事項
一 犯意繼続の意思が判示事實から容易に推測し得られる場合、これについて證據説示の要否 二 被告人が他の者と「共同」してなした殴打成傷につき意思連絡の有無及び刑法第二〇七條に該るか否かの點を明らかにしていない判決の違法性 三 被害者の自訴と醫師自身の見聞實驗の結果とを併せ記載した診斷書の證據能力及び證據價値
- 裁判要旨
一 その證據によつて認めた犯罪行爲を反覆累行した判示事實に徴すれば右八回の連続行爲が犯意繼続の意思に出たものであることを極めて容易に推測し得られるから、かような場合には、特に、證據により犯意の繼続せることを説明しなくとも原判決を破棄するに足る缺點とすることができないものと解するを相當とする。 二 刑法第六〇條に「二人以上共同して犯罪を實行したる者」とある「共同」又は同法第二〇七條にいわゆる「共同者」とあるは、すべて二人以上の者の間に意思連絡のある場合を指すものである。されば右判示に被告人がA外一名と共同して殴打成傷した旨の「共同」が右刑法の法條にいわゆる「共同」の趣旨であるとすれば右三名の間に意思連続あることを證據によりこれを認定判示し且つ刑法第六〇條をも適用すべきである。また、若し、その三名の間に意思連絡のない場合には各自の暴行とその各自の暴行に因り加えたる傷害の部位又は程度とを證據により明確に認定判示して、各自の現に加えた傷害の個數又は程度に對してのみそれぞれ刑法第二〇四條の責を問うべきである、また、若し、右三名の者が暴行を爲し人を傷害したこと明白であるが、その各自の間に意思連絡がなく、且つ各自の加えた傷害若しくはその程度を知り得ないときは、その旨を明瞭に判示して同法第二〇四條の外同第二〇七條をも適用して各自に對しそれぞれ全部の個數程度の傷害の責任を負擔せしむべきものである。然るに現判決の認定判示した事實は、右の三つの場合の何れであるかを知り得ない。従って、原判決は、判決の理由を具備しない違法あるものというべく、論旨は結局その理由あるに歸し、第二事實に關する原判決の部分は破毀を兎れない。 三 醫師Bの本件診斷書中の所論摘示の記載は同醫師の判斷と共にその判斷に至る経過をも記載したものであることは明らかであつて、これによれば同醫師は、所論の如く、單に被害者の言のみを聴取り若しくはこれのみを信用したものではなく、被害者の自訴と自からの檢査とによる見聞實驗の結果に基き原判決が證據として採用した、趣旨の傷害の部位程度の判斷を爲したものであることを看取することができる。されば同醫師の措置は正當であるのみならず同診斷書にかかる経過的記載あるの故を以てその證據としての能力乃至價値を否定すべき何等の理由も存しない。
- 参照法条
旧刑法360條1項,刑法(改正前)55条,刑法204條,刑法60條,刑法207條,旧刑訴法360條1項,舊刑訴法336條
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