裁判例結果詳細

事件番号

昭和23(れ)1117

事件名

業務上横領

裁判年月日

昭和24年7月22日

法廷名

最高裁判所大法廷

裁判種別

判決

結果

棄却

判例集等巻・号・頁

集刑 第12号731頁

原審裁判所名

東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和23年6月26日

判示事項

一 業務上横領にかかる物の一部を食糧管理法に違反し超過販賣した所爲と牽連犯の成否―憲法第三九條後段の適用範圍 二 業務上横領罪と横領した物の一部を超過販賣した食糧管理法違反罪との關係

裁判要旨

一 刑法第五四條第一項後段に規定する所謂犯罪の手段たる行爲とはある犯罪の構成要素に屬せず、しかも行爲の性質上普通その犯罪の實行手段として用いられるものを指構する。ところが本件被告人がその保管にかかる他人の原料麥を不法領得した業務横領の罪と、その横領した麥の一部分を統制額を超えて販売した食糧管理法違反の犯行とは、通常手段結果の關係に立つものとは認められないから、右の法條の所謂牽連犯を成すものではない。假令偶々被告人の主觀に於て前者を後者の手段とする意圖があつたとしても、又兩犯行のなされた日時が接近していようとも、兩者は各々別個の犯罪である。從つて既に後者の犯罪について刑が確定した後に、前者の犯罪に對して刑罰を科したからとて、これも一事不再理の原則に背くものということはできない。故に第二審判決も、これを維持した原審判決も、何れも所論のように憲法第三九條の規定に違反するものではない。論旨は理由がない。 二 第二審判決摘示第二の犯行によつて被告人が業務上横領した麥の中、大麥、小麥各二六〇俵については、被告人はこれをとの統制額を超えて販賣した簾により、昭和二〇年一一月五日八王子區裁判所によつて食糧管理法の違反として處罰せられ、既に刑が確定していること所論のとおりである。しかし食糧管理法は、國民食糧の確保及び國民經濟の安定を圖るため食糧を管理しその需給及び價格の調整並びに配給の統制を行うことを目的とする法律であるから、これに違反する犯罪と業務上自己の占有する他人の物を不法領得する業務横領の罪とは、全く罪質を異にし、各罪を認めた趣旨も異なる從つて前者が後者の處分行爲として後者の中に包含せられているという論旨は、採用し難い。

参照法条

憲法39條,刑法54條1項後段,刑法253條,旧刑訴法363條1號,食糧管理法1條

全文

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添付文書1

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