裁判例結果詳細
裁判例結果詳細
最高裁判所
- 事件番号
昭和23(れ)1631
- 事件名
窃盗
- 裁判年月日
昭和24年3月29日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
集刑 第8号429頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和23年9月8日
- 判示事項
一 舊刑訴法第三六〇條第一項の法意と昭和二二年第一二四號附則第四項の適用明示の要否 二 被告人訊問と證據調とが順序不同な場合と證據調の當否 三 記録に編綴された被害届書等の證據調
- 裁判要旨
一 「法令ノ適用」というのは、これらすべての法規の適用をさしているのではなく「罪トナルベキ事實」に適用されて被告人の刑事責任を生ずるに直接關係ある法令の正條の摘用を意味しているのである、されば所論の昭和二二年法律第一二四號附則第四項のような手續的法規の適用は有罪判決に示す必要がないのである、また假りに右の規定が有罪判決に示さなければならない實體的規定であるとしても「刑法の一部を改正する法律」の施行後において、その施行前の行爲につき刑法第五五條を適用すれば、おのずから所論の規定の適用されたことも推知されるものであることは當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一一二號同年七月十四日言渡大法廷判決)とするところである。 二 刑事訴訟における被告人の訊問は、一面において當事者としての被告人に公訴事實について陳述の機會を與えるものであるとともに、他面において證據方法としての被告人の證據調でもあるのである。一般に被告人の訊問と被告人以外の證據調とは一應別々の段階において行はれるのが通常ではあるが、證據調の段階において被告人の訊問がなされてももとより違法ではない。されば、被告人訊問の趣旨が書證の證據調によつて補われることは少しも差つかえないことである、それ故原審公判において、たとえ裁判長が所論のように第一審判決書の記載に基いて被告人を訊問し、また所論のような證據調をしたとしてもこれらの手續の全體によつて犯罪事實は具體的に明らかにされるのであつて原審の證據調の手續には違法はない。 三 所論の各被害届並びに各被害始末書は、本件捜査手續の段階において各被害者が被害の顛末を報告する書面として作成して捜査官憲に提出したものを本件記録に編綴したものであり、これらの書面の成立についてはその後の審判手續においても別段爭はれた形跡のないことは記録上明らかである。されば右の書面は、本刑事事件の手續について作成されたものであるから舊刑事訴訟法にいわゆる證據書類に當るものである、それ故、右書面の證據調は、同法第三四〇條に從つてなさるべきものであり原審の裁判長が所論のように右書面の要旨を被告人に告げて證據調をしたことは正當であつて原判決には所論のような違法はない。
- 参照法条
舊刑訴法360條,舊刑訴法55條,舊刑訴法338條,舊刑訴法134條,舊刑訴法340條
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