執行官は,各地方裁判所に所属する裁判所職員で,裁判の執行などの事務を行います(裁判所法第62条,執行官法第1条)。
裁判の執行とは,裁判で出された結論が任意に実現されない場合に,強制的に実現することです。例えば,家の明渡しを命じられた人が明け渡さない場合に,その家から,家財道具等を全て運び出し,明渡義務を負う人(債務者)を退去させた上で,明渡しを受ける権利を有する人(債権者)に引き渡したり,借金を返さない人(債務者)の宝石,貴金属等の動産を差し押さえて売却し,その代金を貸主(債権者)に返済するお金に充てたりする仕事を行っています。また,子の引渡しを命じられた人(債務者)が子を引き渡さない場合に,債務者による子の監護を解いて,子の引渡しを受ける権利のある人(債権者)に子を引き渡す仕事も行っています。
上記のほか,不動産の(強制)競売が申し立てられた場合に,不動産の状況等を調査するなどの事務を担当したり,民事訴訟の裁判関係文書を当事者等に届けたりすることも執行官の仕事です。
執行現場では,債務者等の抵抗に遭うこともあるため,執行官には,その抵抗を排除するために,自らの判断で警察の援助を求めることができるなど強い権限が与えられています。
また,執行官は,各地方裁判所によって任命される裁判所の職員であり,地方裁判所の監督を受けますが,国から給与を受けるのではなく,事件の当事者が納めた手数料を収入としています。