憲法記念日を迎えるに当たって(令和8年5月掲載)

令和8年5月

憲法記念日を迎えるに当たって

最高裁判所長官 今崎幸彦

 日本国憲法の施行から本年をもって79年、公布からは80年となります。この間、裁判所は、社会に生起する様々な紛争を適正迅速に解決することを通じて、法の支配を実現し、我が国の発展と国民生活の安定を支えるよう努めてまいりました。

 昭和、平成、令和と時代を経て、我が国の社会経済構造は劇的に変化し、人々の価値観も多様化が進みました。そうした中、ここへきて内外の情勢は急速に流動化、不安定化の様相を深めており、社会の各所で既存の秩序に揺らぎが見られます。先行きへの不透明感が増す中、安定的な社会機能維持へのニーズが高まっているように思われます。

 こうした状況が、社会に生起する紛争にどのような影響を及ぼすかは容易に見通すことができませんが、解決に多くのエネルギーを要する事象となって立ち現れてくることを覚悟しておく必要があります。そのためにも、まずは訴訟の在り方を時代の要請に応じた合理的で効率的なものに刷新し、増大する司法ニーズに的確に応えていくことが求められています。

 5月21日に改正民事訴訟法が全面施行され、申立て等のオンライン化や訴訟記録の電子化等が始まります。また、その後も、裁判手続の各分野でデジタル化に関する法律が順次施行されることになっています。裁判手続のデジタル化は、国民の裁判へのアクセスの利便性を高めるとともに、裁判手続を合理化、効率化して紛争解決機能を向上させる重要な取組です。

 SNSに代表されるネット利用の広がりは、人々の日々の生活や社会の有りようを大きく変えましたが、今後AIが更なる変化をもたらすことは間違いありません。裁判手続のデジタル化の先には、更なる変革の時代が待ち受けていると考えられますが、まずは先の一連の取組を着実に実施しつつ、構造変化の進む我が国社会にも適応可能な新たな裁判像を定着させていくことが重要と考えています。国民に対し司法サービスを提供していく責任を負う者として、全力を挙げて取り組んでいく決意です。

 憲法記念日を迎えるに当たり、日本国憲法の下で国民から負託された裁判所の使命の重さに改めて思いを致し、その役割を十全に果たしていくために力を尽くしてまいりたいと思います。

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