裁判例結果詳細
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行政事件
- 事件番号
平成10(行ウ)60
- 事件名
被爆者援護法上の被爆者たる地位確認等請求事件
- 裁判年月日
平成13年6月1日
- 裁判所名
大阪地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 知事がした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に定める被爆者たる地位及び健康管理手当の受給権者たる地位を失権させるとの取扱いが行政処分に当たるとして,その取消しを求める訴えが,不適法とされた事例 2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づき被爆者健康手帳の交付を受けた者が,本邦を出国後,健康管理手当の支給を打ち切られたことが不服であるとして,国に対してした同法1条1号に定める被爆者たる地位にあることの確認請求及び府に対してした前記手当の支払請求が,いずれも認容された事例 3 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づいて健康管理手当の支給を受けていた者が,本邦出国後,知事が同手当の支給を打ち切ったことは違法であるとして,国及び府に対してした国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 知事がした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に定める被爆者たる地位及び健康管理手当の受給権者たる地位を失権させるとの取扱いが行政処分に当たるとして,その取消しを求める訴えにつき,前記法律及びその下位規定上,同法に規定する被爆者が日本に居住も現在もしなくなったことを理由として,行政庁が何らかの行為を行い失権の取扱いをする旨の規定ないしそれを窺わせる規定は存在せず,また,知事は,被爆者が日本に居住又は現在していることが同法の被爆者たる地位の効力存続要件であるとの解釈のもと,本邦からの出国という事実により前記受給権を喪失したという法律効果が発生したものであるとして,その結果として,前記手当の支給停止が行われたものにすぎないから,それについて「失権の取扱いをする」という何らかの具体的行為を観念できたとしても,同行為は直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものとはいえず,行政処分には当たらないとして,前記訴えを不適法とした事例 2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づき,被爆者健康手帳の交付を受け,健康管理手当の支給認定を受けていた者が,本邦を出国後,同手当の支給を打ち切られたことが不服であるとして,国に対してした同法1条1号に定める被爆者たる地位の確認請求及び府に対してした前記手当の支払請求につき,明文の規定がなく解釈のみによって一定の事実の存続を効力存続要件とするためには,明確な法理論上の根拠などが必要であると解されるところ,同法が社会保障と国家補償の性格を併有する特殊な立法というべき複合的な性格,さらに,被爆者に援護を講じるという人道的目的の立法であることからすると,社会保障的性質を有するからといって,同法が我が国に居住も現在もしていない者を排除すると解することはできず,また同法の各種規定も,本邦に居住又は現在することを被爆者たる地位の効力存続要件と解すべき根拠とすることはできないなどとした上,前記健康手帳の交付を受けた者は,本法を出国後も同法に規定する被爆者たる地位を喪失せず,また,前記手当の支給も受けられるとして,前記請求をいずれも認容した事例 3 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律に基づいて健康管理手当の支給認定を受けた者が,本邦出国後,知事が同手当の支給を打ち切ったことは違法であるとして,国及び府に対してした国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求につき,通達に基づく取扱いが故意又は過失に基づく違法行為と評価されるためには,当該通達の内容が明白に上位規範に反していたり,行政実務上一般的に異なる取扱いがされているなどの特段の事情がある場合に限られるものと解されるところ,知事は,本邦に居住又は現在することを被爆者たる地位の効力存続要件とする旨を定めた通達に従ったものであり,同通達による前記法律の解釈にも一応の論拠があるということができ,少なくとも,同通達が前記法律の規定に明白に反しているとまではいえず,行政実務上も,全国的に同様な統一的対応がとられていたものであるから,国家賠償法1条1項の故意又は過失を認めるに足りる特段の事情を認めることはできないとして,前記請求を棄却した事例
- 全文