裁判例結果詳細

事件番号

平成9(行ウ)59

事件名

公文書非公開決定処分取消請求事件

裁判年月日

平成11年1月25日

裁判所名

横浜地方裁判所

分野

行政

判示事項

1 横浜市公文書の公開等に関する条例に基づく公文書の公開請求に対する一部非公開決定の取消しを求める訴えにおいて,実施機関が非公開部分の一部を書証として提出したことにより,同部分に係る決定の取消しを求める訴えの利益は失われたとした事例 2 市有地のうち公共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地とされる市有地の一覧表中の「単価」欄及び土地開発公社が市の依頼等により先行取得して将来市又はその指定する者に譲渡することが予定されている土地の一覧表中の「帳簿価格」欄(内訳を含む。)に記録された情報が,横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項1号に非公開事由として規定する個人情報に当たらないとされた事例 3 市有地のうち公共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地とされる市有地の一覧表中の「単価」欄及び土地開発公社が市の依頼等により先行取得して将来市又はその指定する者に譲渡することが予定されている土地の一覧表中の「帳簿価格」欄(内訳を含む。)に記録された情報が,横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項2号に非公開事由として規定する法人等情報に当たらないとされた事例 4 市有地のうち公共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地とされる市有地の一覧表中の「単価」欄及び土地開発公社が市の依頼等により先行取得して将来市又はその指定する者に譲渡することが予定されている土地の一覧表中の「帳簿価格」欄(内訳を含む。)に記録された情報が,横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項6号に非公開事由として規定する事務事業情報に当たらないとされた事例

裁判要旨

1 横浜市公文書の公開等に関する条例に基づく公文書の公開請求に対する一部非公開決定の取消しを求める訴えにおいて,実施機関が非公開部分の一部を書証として提出し,これを開示請求者が受領した場合につき,同人が当該訴えで前記決定の取消しを求める利益は,同決定が取り消されることにより非公開部分の公開を受けることにあるところ,実施機関が従前の方針を改め公開することとしたことに伴い当該訴えにおいて前記部分を書証として提出した経緯からすれば,同部分に係る決定は実施機関により取り消されたに等しいといえるから,前記請求者になお同決定の取消しを求める訴えの利益を認めるべき特段の事情はないとして,同訴えの利益は失われたとした事例 2 市有地のうち公共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地とされる市有地の一覧表中の「単価」欄及び土地開発公社が市の依頼等により先行取得して将来市又はその指定する者に譲渡することが予定されている土地の一覧表中の「帳簿価格」欄(内訳を含む。)に記録された情報につき,これらの情報は他の情報と照合することにより個人を識別させる情報であるが,これにより明らかとなるのは個人の一取引に係る資産情報であって,当該取引における譲渡価格が地価公示法による公示価格を規準として定められ,この場合の譲渡には租税特別措置法により譲渡所得の特別控除が認められることからすると,当該譲渡に係る情報は,プライバシーとしての要保護性の弱い情報であるということができる上,横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項1号括弧書きは,同号により公開しないことができる情報から法令に基づき行われた許可等に際し作成又は取得された情報を除いているところ,前記各情報はこれに準ずる機会に得られた情報であり,また,市又は土地開発公社の土地取得価格を明らかにする意味で公開する必要性が特に高いものであるとして,同各情報は同号に非公開事由として規定する個人情報に当たらないとした事例 3 市有地のうち公共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地とされる市有地の一覧表中の「単価」欄及び土地開発公社が市の依頼等により先行取得して将来市又はその指定する者に譲渡することが予定されている土地の一覧表中の「帳簿価格」欄(内訳を含む。)に記録された情報につき,これらの情報は法人等が土地を譲渡した際の譲渡価格を判明させる情報であるが,同譲渡価格は一取引に係るものであり,地価公示法による公示価格を規準として定められたものであって,当該法人等の財産の運用状況や経営状況等の特殊性が推測されるおそれは少ないから,その公開により当該法人等の営業上の地位等に著しい不利益が生ずるおそれがあるとはいえないとして,前記各情報は横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項2号に非公開事由として規定する法人等情報に当たらないとした事例 4 市有地のうち公共事業用地取得に伴い地権者に提供する代替地とされる市有地の一覧表中の「単価」欄及び土地開発公社が市の依頼等により先行取得して将来市又はその指定する者に譲渡することが予定されている土地の一覧表中の「帳簿価格」欄(内訳を含む。)に記録された情報につき,前記各土地の譲渡価格は地価公示法による公示価格を規準として定められるものであることなどからすると,前記各情報の公開により譲渡価格が明らかとなっても,相手方の意思に反してその私的事項を公にするものとはいえないから,関係当事者との信頼関係を損なうものとは認められず,また,近隣地の所有者が将来の土地買収に際して前記各情報の公開により明らかとなった価格に固執するとは考え難いことなどからすると,将来の同種事業の執行に著しい支障が生ずるものともいえないとして,前記各情報は横浜市公文書の公開等に関する条例9条1項6号に非公開事由として規定する事務事業情報に当たらないとした事例

全文

全文

ページ上部に戻る