裁判例結果詳細

事件番号

昭和23(れ)369

事件名

常習賭博、傷害、公務執行妨害

裁判年月日

昭和23年6月29日

法廷名

最高裁判所第三小法廷

裁判種別

判決

結果

棄却

判例集等巻・号・頁

刑集 第2巻7号764頁

原審裁判所名

高松高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

昭和23年3月8日

判示事項

一 公判廷の供述と違う抑留中の被告人に對する司法警察官訊問調書の證據力 二 起訴の罪名と審判の範圍 三 賭博の常習性認定の一場合

裁判要旨

一 被告人の抑留中(論旨では勾留中といつて居るけれども原判決引用の各訊問調書は被告人等が現行犯手續により逮捕せられてから勾留状を執行せられる迄の間に出來たものである)における司法警察官の訊問調書の記載と公判廷における被告人陳述と異なる場合裁判所は刑事訴訟法第三四〇條による證據調をした上公判廷における陳述の模様態度其他事件に現われた總ての資料に照し司法警察官の訊問調書の記載の方が眞實に合するとの心證を得たときはこれを採ることは少しも差支ない。 二 現行法の下においては裁判所は起訴せられた事實に付て審判をするのであつて檢事の付けた罪名に拘束せられるものではない。記録によれば所論の點に付き起訴せられた事實は「被告人を賭博現行犯人と認めて追跡して來た、巡査Aに對し同所でその顱頂部を石を以て一回毆打し因つて同人に全治迄二週間を要する裂創を負擔はせ」という事實であることが明白だから公務執行妨害罪の要件たる事實は明白に起訴事實の中に含まれて居る其故原審は起訴なき事實に付いて裁判をしたのではないので何等違法ではない。 三 賭博の前科があること、二、三回續けて賭博をしたこと等其の他論旨に舉げて居る様な事實は其れ等が各獨立して一つ一つでは常習を認めるに不充分であることは論旨のいう通りであろう、しかし其れ等が加わり合うと其全體によつて常習を認めるに充分となる場合は無論あるので原審が本件各被告人に付き舉示した各資料を綜合して常習を認めたのは相當である、此場合必ずしも前科に付き其賭博が如何なるものであつたかを一々判示する必要はないし又株賭博の如き一般によく知られて居る賭博に付き其方法を詳細に判示する必要もない。被告人が一定の職業を有して居ることも常習を認める妨となるものではない。(大審院判例の場合は前科と犯行との間に長い年月の經過が有つたりなどして本件の場合と同様でない)上記の如く、裁判所は檢事の付けた罪名に拘束されるものではないから辯護人も初めから罪名等に關係なく起訴事實に付て防禦辯護を爲すべきものである、故に原審が起訴せられた事實に付て審判をしたものである限り所論の様な違法があるものとはいえない。

参照法条

刑訴法337條,刑訴法291條,刑訴法362條,刑法186條

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