調停制度100周年行事・庁内パネルディスカッション
『「家族の紛争解決~調停制度の今とこれから~」を考える』を実施しました。

 家事調停手続については、現在進められているウェブ会議による調停手続を皮切りに、今後も急速にデジタル化が進められていくことが予定されていますが、紛争解決機能としての役割を担う調停制度の存在意義が変わることはありません。
 名古屋家庭裁判所では、調停制度開始100年目という節目の時期に、その存在意義を改めて考えるため、家事調停手続を支える家事調停委員及び職員を対象にしたパネルディスカッションを令和4年10月7日(金)に実施しました。
 なお、パネルディスカッションの模様は報道機関にも公開されました。

【参加者】

パネリスト・・・家事調停委員4人、裁判官1人
参加者・・・・・本庁及び各支部の家事調停委員、裁判所職員 60人程度
※ ウェブ会議により本庁及び各支部をつないで実施

【パネルディスカッション】

1.イントロダクション(紛争解決手段としての調停制度の意義)

 これまでの経験談を踏まえながら、紛争解決手段としての調停制度の意義について、以下のような意見が出されました。
・家族間の紛争については、遺恨を残さないためにも、審判や訴訟等よりも、調停による解決が相応しい。
・中でも金銭問題が絡む感情的な対立の激しい紛争については、調停手続を利用することで円満な解決が期待できる。
・当事者が「自分や子などの将来」を自ら考え、自己決定権に基づき自らが決定するという優れた制度である。

2.調停における傾聴について

 調停手続では、当事者双方の事情や意見を聴き、双方が納得して問題を解決できるよう、助言やあっせんをして紛争解決に導くことが求められます。そのため、調停手続の運営に当たっては、利用者にとって分かりやすく、また、納得性の高い事情聴取や調停運営を心掛けていく必要がありますが、その実現に当たって必要な「傾聴」について、以下のような意見が出されました。

・葛藤や様々な感情を抱えた当事者の思いに深く丁寧に耳を傾けることは、調停に対する信頼関係を築くための第一歩である。
・傾聴は受容と共感により進むという姿勢は大切だが、調停では対立当事者がいることから、一方だけに寄り添うわけにはいかず、中立と公正を保った対応が必要である。
・解決意欲を高めるためにも傾聴が大切だが、対立当事者との間に立って公正、中立を保ちつつ、傾聴を行うため、単に当事者の話を受け身で長時間聴くのではなく、紛争解決という目的に向かった、目的にかなったものとする必要がある。
・限られた時間の中で、時間配分等も意識しながら、傾聴をベースにしてメリハリをつけた調停運営をしていくことが重要である。

3.これからの調停(デジタル化)について

 名古屋家庭裁判所では、令和3年12月からウェブ会議による調停手続が始まっています。ウェブ会議による調停手続に対する期待、また、これから進んでいく調停手続のデジタル化に向けた期待について、以下のような意見が出されました。

・対面と遜色なく期日の運営ができるように感じている。
・利用者にとって極めて有効な方法である。
・電話会議と比べて、当事者の様子や沈黙による間などからも状況をうかがうことができる。
・登庁のための交通費用等が抑えられる。
・申立手続や意思確認方法のデジタル化が進むとよい。
・申立てから調停の終結までの全てについて自身のパソコンで完結できるとさらに利便性が高まる。
・デジタル化対応の優劣による格差、不公平を生じさせないような方策も必要である。

まとめ

 家事調停手続のデジタル化は、今まさに議論をしているところであり、今後順次、デジタル化が進んでいきます。もっとも、調停制度の本質的な良さを支える調停委員による傾聴、そして適切な傾聴により当事者の声をしっかり受け止め、信頼関係を形成しつつ、当事者の主体的な解決につなげていくことについては変わることはなく、それに加えて、デジタル化の利点を生かして、調停手続が利用者にとってより良いものになっていくよう努力し続けていくことを確認して、パネルディスカッションを終了しました。

《ディスカッションの様子》