民事保全
手続の案内
概要
民事保全とは、民事訴訟手続でその存否を確定できるような権利又は権利関係を有する者が、その確定までに時間がかかることから生じる危険を回避するために、裁判所に暫定的な保全措置を求め、裁判所の決定の下にこれを執行する手続です。
保全命令手続は、以下の3種類です。
(1)仮差押え(民事保全法20条)
債務者に対して金銭債権を有する者が、債務者の財産状態が変わることにより将来の強制執行が不可能又は著しく困難になるおそれがある場合に、債務者の財産を仮に差し押さえる手続です。
(2)係争物に関する仮処分(民事保全法23条1項)
債務者に対して特定物(非金銭債権)についての給付請求権を有する者が、その目的物の現在の物理的又は法律的状態が変わることにより将来の権利実現が不可能又は著しく困難になるおそれがある場合に、目的物の現状を維持するために必要な暫定措置を行う手続です。
(3)仮の地位を定める仮処分(民事保全法23条2項)
債権者と債務者との間の権利関係について争いがあるため、現在、債権者に著しい損害又は急迫の危険や不安が生じるおそれがある場合に、これを除去して、当該権利関係について、民事訴訟手続による解決が図られるまでの間、一定の権利関係を暫定的に必要な措置を命じる手続です。
申立先
「本案の管轄裁判所」又は「仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所」の専属管轄となります。
申立先の裁判所を調べたい場合は、該当する「申立書提出先一覧」をご覧ください。
・地方裁判所に申し立てる場合→「申立書提出先一覧(地方裁判所)」
・簡易裁判所に申し立てる場合→「申立書提出先一覧(簡易裁判所)」
申立てに必要な費用
手数料は1件2000円です。
※郵便料は裁判所ごとに異なります。申立先の裁判所で必要な郵便料(等)については、「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」をご確認ください。
なお、各地の裁判所のサイトで郵便料(等)を確認される際は、申立先の裁判所に応じて「地方裁判所」又は「簡易裁判所」ボタンをクリックしてください。
郵便料については、保管金として納付することができます。
保管金をインターネットバンキングやATMから納付する電子納付の詳細については、「保管金の電子納付について」をご確認ください。
なお、郵便切手により納付することも可能です。
申立てに必要な書類
申立書正本
立証を要する事由(主張事実)ごとに、それに対応する証拠
一般的な添付書類としては、
① 法定代理人や法人代表者の資格証明書(戸籍謄本、登記事項証明書、商業登記簿謄本等)
② 代理人の委任状
③ 不動産等の登記事項証明書
④ 不動産の価額を証する書面(固定資産評価証明書)
詳しくは申立先の裁判所にご確認ください。
手続の流れ
①無審尋事件
金銭債権又は不動産の仮差押え事件等の審尋の必要がない事件は、保全命令の発令までに、概ね以下の手続が執られます。
ア 保全命令申立て
イ 債権者の裁判官面接(数回にわたる場合があります。)
ウ 担保決定(民事保全法14条参照)
エ 供託書又は支払保証委託契約書提出
オ 保全命令発令
②要審尋事件
仮の地位を定める仮処分等の審尋の必要がある事件は、保全命令の発令までに、概ね以下の手続が執られます。
ア 保全命令申立て
イ 債権者の裁判官面接(数回にわたる場合があります。)
ウ 審尋期日呼出
エ 審尋期日の実施(数回にわたる場合もあります。)
オ 担保決定
カ 供託書又は支払保証委託契約書提出
キ 保全命令発令
留意点
民事保全法の適用を受けない保全処分(特殊保全処分)として、破産法28条による保全処分、会社更生法40条による保全処分、民事執行法55条及び77条による保全処分などがあります。
不服申立て
保全命令手続の裁判に対する不服申立方法としては、①保全申立てを却下する裁判に対する債権者の即時抗告(即時抗告期間は告知を受けた日から2週間の不変期間内)、②保全命令(仮差押え、仮処分)の裁判に対する債務者の保全異議、保全取消しの申立て、③保全異議申立て及び保全取消の裁判に対する保全抗告(保全抗告期間はその送達を受けた日から2週間の不変期間内)があります。