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奈良地方・家庭裁判所の庁舎コンセプトは,「風と緑」です。「風」を感じることができ,「緑」と調和のとれた,空間的にも,心理的にも,ゆとりを感じさせることができる庁舎とするように,景観に配慮し,歴史と文化の風を感じさせる外観や,中央アトリウム(※)への風の通りぬけに「風」のイメージを,また,前庭の緑地に「緑」のイメージを表現しています。
※アトリウム:屋内に設けた大規模な中庭状の天井の高い空間
1. 庁舎の規模
- 敷地面積 約10,000㎡
- 構造規模_鉄骨造 地上4階地下1階
- 建築面積 約2,300㎡ 延床面積 約8,200㎡
- 建物高さ 19.2m
- 各階主用途 地階 電気室,機械室
1階 法廷,地裁民事受付・執行・破産,簡裁フロア
2階 法廷,地裁民事公判部,地裁刑事公判部フロア
3階 調停室,家裁(家事・少年)フロア
4階 事務局フロア
2. 庁舎の特徴
国民に利用しやすく分かりやすい裁判所
- ア)利用者に配慮した各部門のゾーニング
1階に簡裁や民事訟廷,執行,破産などの来庁者が多い部門を設置し,2階に地裁の民事,刑事を集約,3階にプライバシーを尊重する家裁部門を設置,4階に一般利用者が少ない行政部門を設置して,利用者が利用しやすいよう,各部門を明確にゾーニングしています。 - イ)目線の通りのよい動線(廊下)
メインエレベータホールを庁舎平面の中心に配置し,それを交点として,東西方向と南北方向に廊下を通し,目的地ができるだけ,目線に入るようになっています。 - ウ)利用者にゆとりのある空間の提供
玄関から真正面にアトリウムを配置し,待合せ等に利用できるゆとりのある空間を演出する事によって,動線の起点を提供し,庁舎全体を把握しやすいようになっています。また,その空間に裁判所の顔となる受付事務部門や各法廷等が面しています。 - エ)バリアフリー
高齢者や体の不自由な方も利用しやすいよう,いわゆるハートビル法に適合する庁舎となっています。
環境負荷低減の推進
- ア)周辺環境への配慮
敷地前面を芝生にして,地球温暖化対策を図っています。 - イ)省エネ・省資源
外壁・屋根の断熱,窓の断熱(断熱性の高い複層ガラスの使用)・日射遮蔽(大庇や窓庇,縦ルーバーの使用),局所空調によって負荷を抑制し,また,自然採光,自然通風によって自然エネルギーを利用し,照明エネルギーの最小化,最適運用によって資源を有効利用し,省エネ・省資源を図っています。 - ウ)長寿命
階高のゆとり,リニューアルへの配慮等によって,ゆとりを確保しています。 - エ)エコマテリアル
自然材料や人体に無害な材料などの低環境負荷材料を使用しています。
地域景観への配慮
- ア)地域景観に配慮した外観
新庁舎は,古都奈良のイメージを代表する奈良公園と近鉄奈良駅ビルなどを中心とした現代的町並との境界線に位置することから,格子や庇などの和風的イメージをデザインモチーフとしながらも,ガラスや金属などの材料を使用することによって,古都奈良と現代的町並の境界にふさわしい外観となっています。 - イ)前面道路への配慮
建物の高さから生じる建物全体の圧迫感を抑えるため,4階部分をセットバックしています。また,庁舎の前庭に緑を配することで,周辺の興福寺境内の緑などの自然景観に配慮しています。
埋蔵文化財との共存
- 地下階は,旧庁舎の位置の範囲で,しかも最小限の床面積にすることによって,埋蔵文化財をできるだけ保存するものとなっています。また,地下階のない部分についても,基礎梁の下端を埋蔵文化財の検出レベルの上に設定し,さらに杭の位置は県教育委員会,奈良文化財研究所と協議を行い,重要遺構を避ける位置としています。
裁判員制度に対応する施設
裁判員制度のため,1階に裁判員裁判用法廷を設置しています。裁判官3人と裁判員6人の計9人が意思疎通を図りながら,ともに集中して,審理に臨み,審理内容を十分の理解することができるようにアーク形の法壇にし,70席の傍聴席を設置しました。