上メニューへスキップ  右メニューへスキップ  メインコンテンツへスキップ(スクリーンリーダーをご利用の方、キーボード操作の方のアクセシビリティ向上のため設置)





メニューを飛ばす


裁判所トップページ > 各地の裁判所 > 大阪地方裁判所・大阪家庭裁判所 > 裁判手続を利用する方へ > 知的財産権専門部(第21・26民事部)について > 第1部(知的財産権制度,訴訟手続の概要など)


第1部(知的財産権制度,訴訟手続の概要など)

Q. 最初に、大阪地方裁判所では、どの部が知的財産権訴訟を担当することになっているのでしょうか。

A. 大阪地方裁判所には、大きく分けて民事部と刑事部があり、その民事部のうち第21民事部と第26民事部が、知的財産権に関する訴訟を専門的に担当しています。一般には、「知財部」と呼ばれております(画像1)。

大阪地裁 組織図

画像1

Q. そこには、どのようなスタッフが所属しているのですか。

A. 裁判官、裁判所書記官、裁判所調査官がいます。裁判所調査官は、電気、機械、化学関係の技術的な知識、それから特許関係の実務知識の両方を生かして調査の仕事をしています。大阪地裁の裁判所調査官は現在全員特許庁出身で、裁判官を技術的な面から補佐するために裁判所に出向してきています。

Q. 次に、「知的財産権」とは、正確に説明すると、どういう権利なのでしょうか。

A. 知的財産権とは、「知的生産活動から生じる成果のうち、財産的価値を有するものとして法的保護の対象となるもの」と説明されています(画像2)。ここでは知的財産権の種類を「知的創造物についての権利」と「営業標識についての権利」に分けて示しています(画像3)。この中の特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つを普通、「産業財産権」といいます。この産業財産権に、文学、学術、美術、音楽に関する著作権や営業秘密等を加えて、「知的財産権」といいます。
(注)なお、平成14年に制定された知的財産基本法では、同法に定める「知的財産」について、「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう。」と定義されています(同法2条1項)。

知的財産権

画像2

知的財産権の種類

画像3

Q. それでは、これらの権利は、実際にどのように使われているのでしょうか。

A. それでは具体的にものを使って説明しましょう。

Q. たとえば、携帯電話の中にもたくさんの知的財産権が含まれているんですか。

A. そうですね。携帯電話は大きく表示部分、入力部分、機能回路部分、電源部分に分けられますが、どの部分にも、多くの特許が含まれています。

Q. それらの特許は具体的にはどういう内容のものですか。

A. 例えば、携帯電話には、雑音が多いという問題点があるとします。これを解決するために、特殊な素材を用いて雑音を小さくするアンテナを開発したとしましょう。こういうものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」として、特許法上の「発明」に当たります。あと、最近人気の、映像を送信できる機能などもたくさんの発明が関係しているでしょう。

Q. 特許権が認められるためには、発明に該当するだけでなく、他にも要件が必要ですね。

A. はい。特許権が与えられる発明は、産業上有用で新規性・進歩性があり、かつ、先に出願されていないことが必要です。今の例でいえば、特許出願の前に、同じ素材を使ったアンテナが載った文献があれば、その発明は新規性がないことになります。また、全く同じものは存在しなくても、前からある発明を見れば、当業者(画像4)、この携帯電話の例だと、携帯電話製造メーカーに勤務している技術者なら誰でも考えつくと判断されれば、進歩性がないことになります。

当業者

画像4

Q. 特許と似ていると言われる実用新案とはどういうものですか。

A. 実用新案は、自然法則を利用した技術的思想の創作である点では特許と同じですが、考案が対象で、必ずしも高度な技術的思想の創作である必要はありません。また、進歩性が否定されるのも、極めて容易に別の考案ができたときです(画像5)。携帯電話でいえば、本体の中にコンパクトに収容できるようなアンテナの構造などが実用新案の対象でしょうか。

実用新案

画像5

Q. 特許と実用新案では、審査の内容や権利期間に差がありますか。

A. 特許は、新規性、進歩性について実体的審査が行われますが、実用新案は形式審査のみですし、権利期間も、特許は出願日から20年ですが、実用新案は出願日から10年です(画像5)。

Q. 次に、意匠とはどういうものですか。

A. この画像は意匠図面です(画像6)。意匠とは、「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの」(意匠法2条1項)であり、工業上利用できる物品に関する美感、独自性のある物の形状、模様、色彩などの創作を言います。携帯電話でいえば、全体の形や数字等の配列などに、今までにない新しいデザインが施されていれば、意匠権が与えられます。権利期間は設定登録日から20年です。

意匠公報の図面

画像6

Q. では、商標とはどういうものですか。

A. この「★ABC」という電話通信サービス会社が自社製品であることを表示するマークが商標です(画像7)。商標は自分の製品、サービスと他社のそれを識別する標識です。特許、実用新案、意匠は、人間の創造的活動の結果としての創作を保護するものですが、商標は、商標を使う者の業務上の信用の維持を図ることを目的にしています。商標では、権利期間は設定登録の日から10年ですが、他の権利と異なり、最初の権利期間が過ぎても、商標権者が使用している限りは更新登録をすることができます。

携帯電話 商標部分

画像7

Q. 次に、産業財産権以外の知的財産権である、著作権とはどういうものですか。

A. 著作権法2条1項1号に規定された「著作物」、すなわち、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」は、著作権による保護を受け、他人が勝手に使用することはできません。著作物には、小説、脚本、音楽、絵画、版画、図面、映画、写真等の他コンピュータ・プログラム、データベース等があります(画像8)。
 例えば、この携帯電話の着メロにある歌手の曲が使用されていれば、その曲は音楽の著作物として著作権による保護の対象になります。著作権は、特許権等と異なり、著作物が完成すれば、登録しなくても権利が発生します。権利期間は著作物を創作した時から著作者の死後50年です。

著作権

画像8

Q. 最後に、不正競争防止法について、説明して下さい。

A. 資本主義社会は自由競争が原則ですが、度を超した不正な競争により利益を図る行為は、真面目に営業する者の不利益となりますし、一般消費者にとっても迷惑です。不正競争防止法は、他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用して他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(不正競争防止法2条1項1号)、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為(不正競争防止法2条1項3号)、不正の手段により営業秘密を取得し、又はその営業秘密を使用、開示する行為(不正競争防止法2条1項4号)などの不正競争行為を防止する法律です(画像9)。

不正競争防止法

画像9

Q. 携帯電話の例でいうと、どんなものが不正競争行為になりますか。

A. そうですね。例えば、ブランド物の携帯ストラップ(画像10)と同じマークが付いた偽物を販売する行為は不正競争行為に当たります。他にも、よく問題になっているものには偽物バッグがありますし、大阪では、かにの看板が問題になった事件もありました。

携帯電話 ストラップ部分

画像10

知的財産権自体についての説明はここまでです。

Q. 次は、特許権を取得するための手続などについて説明してください。

A. 特許を受けるためには、先ず最初に、出願をしなければなりません(画像11)。そのためには、願書を特許庁長官に提出する必要があります。現在はパソコンを利用した電子出願が主流になっています。

出願から特許取得まで

画像11

Q. 必要な書類としてはどのようなものがありますか。

A. 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付します(画像12)。

特許出願書類

画像12

Q. 後で出てきますが、侵害訴訟などでは、この特許請求の範囲が重要ですね。

A. そうです。この明細書の特許請求の範囲の記載によって、技術的範囲が決まります。

Q. 出願の後はどうなるのですか。

A. 出願された後、審査請求を待って、実体的審査を受けることになります(画像11)。具体的には、特許の要件を充たしているということになれば、特許登録されることになるのですが、特許法で定められている拒絶事由があると、拒絶理由通知がなされ、意見書・補正書でもその理由が解消されていないと判断された場合は、拒絶査定がなされ、特許を取得することはできません(画像13)。

審査

画像13

Q. 拒絶査定の理由にはどんなものが多いのですか。

A. 色々種類がありますが、最も多いのは、新規性に欠ける、進歩性に欠けるというものです。
 関西弁で言えば、「今までのんとおんなじや。」、「変わり映えせんなあ、もひとつやなあ。」といったところでしょうか。

Q. もし、審査官の判断に納得できない場合はどうするんですか。

A. 拒絶査定について不服がある場合は、特許庁に対し、審判を請求することができます。ここで請求が認められて、特許を取得できる場合もあります。また、請求が認められないで、その審判での判断にも納得できない場合は、審決取消訴訟を提起することができます。
 以上が出願から特許取得までの手続の流れです。
 あと、次にでてくる侵害訴訟と関係の深いものに無効審判請求があります。これは、権利自体の有効性を争うものです(以上、画像14)。

審判請求

画像14

Q. それでは、最後に、侵害訴訟の手続を説明してください。

A. 特許権侵害訴訟を例に取って説明しましょう。特許権侵害訴訟は、大部分が侵害差止請求や損害賠償請求です(画像15)。差止請求とは、早い話が、被告製品を「造るな」、「売るな」といったところです。

侵害訴訟

画像15

Q. なるほど。では、原告の立場になって、先ず、何をすればいいのでしょうか。

A. 原告としては、まず、どのような特許権に基づく請求であるかを明らかにする必要があります(画像16)。
 これは、特許登録原簿に記載されている特許番号、出願日、登録日などで特定します。

特許権

画像16

Q. 特許権を特定しました。その次はどうすればいいんでしょうか。

A. 次に、原告は、特定された特許権について、特許発明の技術的範囲を明らかにする必要があります。「A部品と、B部品とからなるC製品」(画像17)

特許請求の範囲

画像17

Q. それは、どのようにすればいいのですか。特許請求の範囲とどのように関係してくるのですか。

A. 特許発明の技術的範囲は、先程説明があった、明細書の特許請求の範囲の記載によって定められます。この例では、特許公報の「特許請求の範囲」に「A部品と、B部品とからなるC製品」と書かれていますが、比べやすいように、これをいくつかの要素に分解します。
 これを、「構成要件の分説」と呼んでいます。例えば、構成要件A、構成要件B、構成要件Cというように分解するわけです(以上、画像18)。

特許請求の範囲 構成要件の分説

画像18

Q. なるほど、それで、この構成要件の分説の後はどうするんですか。

A. 次に、被告製品についても、構成要件に対応させて、その構成というか具体的内容を特定した上で、これをいくつかの要素に分解します。この例でいえば、a、b、cというふうに分解することになります(画像19)。

構成要件に対応させて被告製品を分解

画像19

Q. これで、両方の役者が揃ったことになりますね。この後、どういうふうに進んでいくんですか。

A. 特許発明の構成要件と被告製品の構成をそれぞれ対比します。aがAに、bがBに、cがCに含まれる、すなわち、構成要件をすべて充足すれば、被告製品は、特許発明の技術的範囲に属すると判断され、原告の請求した被告製品の製造、販売の差止めや損害賠償が認められることになります(画像20)。

構成要件の対比

画像20

Q. 今の説明からすると、構成要件を全部満たさないと特許権侵害にならないということですか。

A. そうです。a、b、cの一つでも、対応する構成要件を充たさないと判断されれば、被告製品は特許発明の技術的範囲に属さないとして、原告の請求は棄却されます(画像21)。以上が特許請求の範囲の記載に基づく「文言侵害」、「非侵害」の判断です。
 もっとも、文言侵害にならない場合でも、被告製品が一定の要件を満たすときには、均等論により、原告の請求が認められることがあります。(画像22)

構成要件の対比

画像21

構成要件の対比

画像22

Q. 原告側の進め方については、よくわかりました。最後に被告側の主張についてはどうなりますか。

A. 被告は、被告製品が原告の特許発明の技術的範囲に属するという、原告の主張に、理由を挙げて具体的に反論します。
 先程の「A」の例でいえば、
ア 明細書の「発明の詳細な説明」や公知技術、出願経過を斟酌すれば、構成要件Aにいう「A」は、本来の意味より狭い「A’」の範囲に限定される。
イ 被告製品にいう「a」は「A’」に含まれない。
ウ よって、被告製品の構成aは、本件発明の構成要件Aを充足しない。
といったところでしょうか(画像23)。

被告側の反論例

画像23

Q. 反論だけでなく、被告の方から積極的に主張する手段というのはないのですか。

A. あります。例えば、
ア 原告の特許権は、出願前に知られていた発明と同じもので、特許無効審判により無効とされるべきものです。
イ 被告は、原告が特許出願する前から、被告製品を実施していました。
といったことを主張することが考えられます(画像24)。

被告の積極的主張例

画像24