情報取得
手続の案内
概要
債務者の銀行預金や給与、不動産等に関する情報を、債権者が特定した銀行や市町村、登記所等から提供してもらう手続です。この手続の結果を踏まえて、債権執行や不動産の強制競売などを申し立てるかを検討することができます。
※情報取得手続は、債務者の財産を調査するのみの手続です。債権を回収するためには、債権差押えなどの強制執行や担保権実行を別途行う必要があります。
第三者から入手できる情報は次の㋐~㋓です。以下の説明のとおり、各情報により手続の流れが異なるので、注意してください。
㋐ 不動産に関する情報(不動産情報)
債務者名義の不動産(土地・建物)の所在地や家屋番号
㋑ 給与(勤務先)に関する情報(勤務先情報)
債務者に対する給与の支払者(債務者の勤務先)の名称や住所
㋒ 預貯金に関する情報(預貯金情報)
債務者の有する預貯金口座の情報(支店名、口座番号、額)
㋓ 株式、社債、国債等に関する情報(振替社債等情報)
債務者名義の株式・社債・国債等の銘柄及び額又は数
申立人
(1) ㋐不動産情報、㋒預貯金情報、㋓振替社債等情報
①執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者又は②債務者の財産について一般先取特権を有する債権者です。
①執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者
強制執行の申立てができる債権者であることが必要です。
強制執行の申立てをするためには、債務名義の正本が必要です(謄本では強制執行はできません。)。また、執行文が必要なものについては執行文(「債権者○○は債務者××に対し、この債務名義により強制執行することができる。」等と書かれた裁判所書記官又は公証人作成の書類)が付いているかどうかを確認してください(通常は最終ページにあります。)。債務名義正本の発行や執行文の付与は、債務名義を作成した裁判所や公証役場で行います。
執行文が必要なもの
判決正本、和解調書正本、民事調停調書正本、公正証書正本、訴訟費用額確定処分正本等
※家事調停調書正本には原則として執行文は不要ですが、家事調停で決められた慰謝料や解決金などを請求する際には、家事調停調書正本に執行文が必要となります。
執行文が不要なもの
家事調停調書正本(養育費・婚姻費用等の扶養義務に基づくものや遺産分割、財産分与等を請求するとき)、仮執行宣言付支払督促正本、仮執行宣言付少額訴訟判決正本
※家事審判書正本の場合は、執行文は不要ですが、確定証明書が必要になります。
②債務者の財産について一般先取特権を有する債権者
雇用関係等によって生じた債権については、債務者の財産について一般の先取特権があります(給料先取特権(民法306条2号、308条)など)。申立てに当たっては、先取特権を有することについての証明文書が必要になります。
(2) ㋑勤務先情報
民事執行法151条の2第1項各号に掲げる義務(養育費や婚姻費用など)に係る請求権か人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の執行力のある債務名義正本を有する債権者に限られます。
※貸金等の債務名義や一般の先取特権では、㋑勤務先情報の申立てはできません。
申立先
債務者の住所地を管轄する地方裁判所です。
申立先の裁判所を調べたい場合は、「申立書提出先一覧(地方裁判所)」をご覧ください。
申立てに必要な費用
手数料(1個の申立てにつき1000円)、民事執行予納金(各裁判所によって異なります。)及び郵便料
1名の債権者が2通以上の債務名義に基づいて申し立てても1個の申立てとみなします。
債権者が2名以上の場合は、債務名義が1通であっても、申立ての個数は債権者の数により判断します。
※債務者については1名ごとに申し立ててください。
㋒預貯金情報、㋓振替社債等情報の情報取得の手続には、第三者に対する報酬として、第三者1名ごとに2000円の予納金が必要になります。予納金については、郵便料と併せて納付していただく場合がありますので、以下の「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」をご確認ください。
※郵便料等は裁判所ごとに異なります。申立先の裁判所で必要な郵便料等については、「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」をご確認ください。
なお、この手続は「地方裁判所」の手続ですので、各地の裁判所のサイトで郵便料等を確認される際は「地方裁判所」ボタンをクリックしてください。
申立てに必要な書類
1 申立書類
【注意】
申立ては、債務者ごとに申立書を作成し、別事件として申し立ててください。
同じ債務者でも、対象となる財産の種類が違う場合は、㋐不動産情報、㋑勤務先情報、㋒預貯金情報、㋓振替社債等情報の別に申立書を作成し、別事件として申し立ててください。
(1) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者(㋐、㋑、㋒、㋓に共通)
A 申立書(頭紙)
B 当事者目録(第三者目録含む)(原本と別に写しも要提出)
C 請求債権目録(原本と別に写しも要提出)
D 所在地目録(㋐不動産情報のみ)
E 財産調査結果報告書
F 債務名義等還付申請書
(2) 一般の先取特権を有する債権者(㋐、㋒、㋓に共通)
A 申立書
B 当事者目録
C 担保権・被担保債権・請求債権目録
D 所在地目録(㋐不動産情報のみ)
E 財産調査結果報告書
(3) ㋐、㋑の申立ての場合
財産開示期日が実施されたことの証明書
㋐、㋑の申立ての場合は、債務者に対し3年以内に財産開示期日が実施されたことが要件となりますので、財産開示期日を実施した裁判所に申請の上、提出してください。
2 添付書類
(1) すべての申立てに共通の添付書類
A 資格証明書
申立人、債務者及び第三者が会社や銀行などの法人の場合、申立日から3か月以内に発行されたその法人の商業登記事項証明書(代表者事項証明書)が必要です。法務局で発行されますので、お近くの法務局にお問い合わせください。
B 当事者の住所・氏名に変更がある場合等の必要書類
次の場合は、住民票、戸籍謄本、戸籍の附票、商業登記事項証明書等の公文書等(現在の住所、氏名とのつながりを証する公文書は申立日から3か月以内に発行されたもの)が必要です。
・当事者の住所、氏名(商号)が債務名義等に記載された住所・氏名(商号)と異なっている場合(転居したり、旧姓に戻った場合等)
※債務名義等に記載された住所、氏名と現在の住所、氏名のつながりを明らかにするために必要です。
・債務者の特定に資する事項に債務者の生年月日、旧姓及び旧住所等を記載する場合
(2) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者
A 執行力のある債務名義の正本
B Aの送達証明書
C 債務名義の更正決定がある場合は、その決定正本
D Cの送達証明書
E 債務名義が家事審判の場合は、その確定証明書
F その他執行開始要件を備えたことの証明を要する場合はその証明文書
G 債務名義等還付申請書(受書を含む。)(還付が必要な場合)
H Gの債務名義等原本還付申請をする場合、上記A~Fの写しを各1通
※上記A~Fは、原本提出が必要ですが、同一債務名義に基づいて複数の申立てを同時に行う場合、2通目以降の申立てにおいては、1通目に添付した原本を引用することができます。引用を希望する場合は、上記必要書類の写しとともに、引用上申書を提出してください。
(3) 一般の先取特権を有する債権者
一般の先取特権を有することの証明文書が必要となります。どのような文書がこれに該当するかは、事案ごとの判断となります。
※㋐不動産情報の場合、先取特権を有することの証明文書は、原本に加えて、その写し2通を裁判所に提出してください。写しのうち1通は、債務者へ情報提供命令正本とともに送達します(民事執行法205条3項)。
3 証拠書類
(1) 民事執行法197条1項1号の主張をする場合
A 同号の証明資料
配当表写し、弁済金交付計算書写し、不動産競売開始決定写し、債権差押命令写し、配当期日呼出状写しなど
B 民事執行法205条2項の証明資料
財産開示期日が実施されたことの証明書、財産開示期日調書写し、財産開示手続実施決定写しなど
(2) 民事執行法197条1項2号の主張をする場合
A 同号の証明資料
財産調査結果報告書及び添付資料
B 民事執行法205条2項の証明資料
財産開示期日が実施されたことの証明書、財産開示期日調書写し、財産開示手続実施決定写しなど
※各要件と証拠書類についてはQ&Aをご覧ください。
手続の流れ
1 申立てが認容された場合
(1) ㋐不動産情報と㋑勤務先情報の申立て
① 申立書と添付書類から要件が満たされていると判断された場合、情報提供命令が発令されます。
② 債務者及び申立人に対して、情報提供命令正本が送付されます。債務者は1週間以内に執行抗告をすることができます。
③ 情報提供命令が確定すると、第三者に対し、情報提供命令正本が送付されます。
④ 債務名義正本等の返還は、情報提供命令確定後にできます。申立てと同時に還付申請をしていれば、原則として、債務名義正本等は情報提供書の写しに同封して申立人に送付されます。
(2) ㋒預貯金情報と㋓振替社債等情報の申立て
① 申立書と添付書類から要件が満たされていると判断された場合、情報提供命令が発令されます。
② 第三者及び申立人に対し、情報提供命令正本が送付されます。
③ 債務名義正本等は、申立てと同時に還付申請をしていれば、原則として、②の情報提供命令正本に同封して申立人に送付されます。第三者による情報提供(第三者が複数の場合は最後に情報提供が裁判所にされた日)から一定期間を経過すると、債務者に情報提供通知が送付されますので、注意してください。
2 申立てが却下された場合
申立書と添付書類から要件が満たされていないと判断された場合、申立ては却下され、申立人に却下決定正本が送付されます。
3 第三者からの情報提供
情報提供命令正本の送付を受けた第三者は、執行裁判所に対し、債務者の財産情報を書面で提供します。
提出期限の定めはありませんが、基本的には、2週間程度が一つの目安となります。ただし、第三者の状況等によっては、回答に時間を要する場合があります。
4 申立人に対する情報提供書の写しの送付等
第三者が作成した情報提供書の写しは、執行裁判所を経由するか、又は第三者から直接、申立人に送付されます。
5 債務者に対する情報提供がされた旨の通知
第三者から執行裁判所に情報提供書が届くと、執行裁判所は、債務者に対し、情報提供命令に基づいて財産情報が提供されたとの通知をします。
通知書は、第三者から(第三者が2人以上いる場合は、最後の)情報提供書が提出された後一定期間が過ぎた時点で、事件ごとに1回送付します。通知書には、情報提供命令の写しが同封されます。
その他
その他の手続に関するご案内についてはQ&Aをご覧ください。
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