担保不動産競売
手続の案内
概要
債権者が、債務者が所有している不動産に抵当権などの担保権※を有しているときに、担保権を実行して当該不動産を売却して債権を回収する手続です。
※担保権は、債権者と債務者との合意や法律の規定によって定められる特別な権利です。代表的な担保権としては、抵当権(債権者が担保不動産の売却代金から優先的に弁済を受けるために設定する権利)があります。
申立先
原則として、目的となる不動産の住所地を管轄する地方裁判所です。
申立先の裁判所を調べたい場合は、「申立書提出先一覧(地方裁判所)」をご覧ください。
申立てに必要な費用
手数料(担保権1個につき4000円)、民事執行予納金(各裁判所によって異なります。)、差押登記のための登録免許税が必要です。
その他、連絡用の郵便料が必要な場合があります。
※1個の債権の担保として複数の不動産に担保権を設定(共同担保)している場合は、不動産の数にかかわらず、担保権は1個と数えます。
例)1個の住宅ローン債権の担保として、土地と建物に共同担保として抵当権を設定した場合、担保権は1個と数えます。
※登録免許税
確定請求債権額の1000円未満を切り捨て、これに1000分の4を乗じて100円未満を切り捨てる。算出額が1000円未満のときは1000円とみなす。請求債権額が根抵当権極度額を上回っているときは極度額を請求債権額として算出する(詳しくは申立先の裁判所にお問い合わせください。)。
※郵便料等は裁判所ごとに異なります。申立先の裁判所で必要な郵便料等については、「各地の裁判所の裁判手続利用ページ一覧」をご確認ください。
なお、本件手続は「地方裁判所」の手続ですので、各地の裁判所のサイトで郵便料等を確認される際は「地方裁判所」ボタンをクリックしてください。
申立てに必要な書類
1 競売開始決定発令等に必要な書類
A 担保不動産競売申立書(申立書頭書、当事者目録、担保権・被担保債権・請求債権目録、物件目録)
B 申立日から1か月以内に発行された不動産登記事項証明書(全部事項証明書又は現在事項証明書)
物件が土地・建物の一方のみの場合 → 他方の登記事項証明書も必要です。
物件が敷地権付区分所有建物である場合 → 敷地たる土地の登記事項証明書も必要です。
物件が更地である場合 → 更地である旨の上申書が必要です。
C 公課証明書
最新の公課及び評価の額が記載されているものを提出してください。非課税の不動産については評価証明書を提出してください。
D 商業登記事項証明書
債権者、債務者又は所有者が法人である場合に必要です。申立日から3か月以内に発行されたものを提出してください。ただし、債権者については、代表者事項証明書でも可能です。
E 住民票
債務者又は所有者が個人の場合には、申立日から3か月以内に発行されたものを提出してください。
F 破産管財人資格証明書
当事者に破産管財人が含まれている場合に必要です(申立日から3か月以内に発行されたものを提出してください。)。ただし、破産者が法人の場合で、商業登記事項証明書に記載がある場合は不要です。
G マンション管理組合、管理組合法人又は管理者が競売を申し立てる場合の資格証明書等
・マンション管理規約写し
・マンション管理組合の総会議案書、議事録
・理事長の資格証明書、理事長への授権を証明する書面 など
※詳細は申立先の裁判所にお問い合わせください。
H 委任状など
競売の申立てを代理人が行う場合には、代理権限を書面で証明しなければなりません。
・弁護士が代理人となる場合 委任状
・支配人が代理人となる場合 申立日から3か月以内に発行された資格証明書(支配人登記のされた登記事項証明書等)
・従業員を代理人とする場合 代表者作成の代理人許可申立書、社員証明書及び委任状(委任状又は社員証明書に代理人となる者の届出印の押印が必要。収入印紙500円を申立書に貼付。割印はしない。)。
I 特別売却に関する意見書(申立書に意見を記載する場合は不要)
以下についてはQ&Aをご覧ください。
・対象物件について、すでに滞納処分庁による差押登記がなされている場合の必要書類(続行決定申請書)について
・代位による相続登記を要する申立ての場合
・一部代位弁済により移転した(根)抵当権に基づく競売申立て
2 現況調査等に必要な書類(申立時に併せて提出してください。)
※以下のA~Gのコピーを、記載の順で各1部ずつセットにしたものを2組と、Hを3部提出してください。
A 1のBに記載した登記事項証明書(物件が更地である場合は、その旨の上申書)
B 1のCの公課証明書
C 公図写し(法務局の登記官による認証のあるもので、申立日から3か月以内に発行されたもの。縮小コピー不可。申立ての対象が建物のみの場合にも提出)
D 建物図面(法務局の登記官による認証のあるもので、申立日から3か月以内に発行されたもの。縮小コピー不可。申立ての対象が土地のみの場合にも提出。備付けがない場合にはその旨の上申書)
E 物件案内図(住宅地図等。物件に目印をしたもの)
F 債務者又は所有者の商業登記事項証明書(法人の場合)
G 債務者又は所有者の住民票(個人の場合)
H 不動産競売の進行に関する照会書(対象物件が建物のみの場合には、「対象物件が建物のみの場合の競売事件に関する照会書」も提出)、その他事件の進行に有益な資料
※提出の際のお願いについてはQ&Aをご覧ください。
3 当事者の住所、氏名が不動産登記記録上の住所・氏名(商号)と異なっている場合(転居、法人の本店移転、婚姻による改姓の場合等)は、不動産登記記録上の住所、氏名(商号)と現在の住所、氏名(商号)のつながりを明らかにするための書類(住民票、戸籍謄本、戸籍の附票、商業登記事項証明書等の公文書等。現在の住所、氏名とのつながりを証する公文書等は申立日から3か月以内に発行されたもの)が必要です。住民票を異動させていない場合など、つながりを明らかにできないときは、申立先の裁判所にあらかじめお問い合わせください。
4 申立書添付の目録
担保権・被担保債権・請求債権目録……1部
手続の流れ
1 申立て
不動産執行の申立ては、書面でしなければなりません。申立ては、目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所にします。
2 開始決定・差押え
申立てが適法にされていると認められた場合は、裁判所は、不動産執行を始める旨及び目的不動産を差し押さえる旨を宣言する開始決定を行います。
開始決定がされると、裁判所書記官が、管轄法務局に対して目的不動産について「差押」の登記をするように嘱託をします。また、債務者及び所有者に開始決定正本を送達します。
3 売却の準備
裁判所は、執行官や評価人に調査を命じ、目的不動産について詳細な調査を行い、買受希望者に閲覧してもらうための書類(三点セットといいます。)を作成します。三点セットについては、後で説明します。
さらに、裁判所は、評価人の評価に基づいて売却基準価額を定めます。売却基準価額は、不動産の売却の基準となるべき価額です。入札は、売却基準価額から、その10分の2に相当する額を差し引いた価額(買受可能価額)以上の金額でしなければなりません(後述5参照)。
4 売却の実施
売却の準備が終わると、裁判所書記官は、売却の日時、場所のほか、売却の方法を定めます。売却の方法はいくつかありますが、第1回目の売却方法としては、定められた期間内に入札をする期間入札を行うことが一般的です。
売却の情報を広く提供するため、インターネット上の不動産競売物件情報サイトBITで売却物件の情報を提供しています。
買受けを希望する方は、裁判所の閲覧室やBITで三点セットの閲覧をしてください。三点セットとは、①土地の現況、建物の種類・構造など、不動産の現在の状況のほか、不動産を占有している者の有無やその者が不動産を占有する権原を有しているかどうかなどが記載され、不動産の写真などが添付された現況調査報告書、②競売物件の周辺の環境や評価額が記載され、不動産の図面などが添付された評価書、③買受人が引き継がなければならない賃借権などの権利があるかどうか、土地又は建物だけを買い受けたときに建物のために底地を使用する権利が成立するかどうかなどが記載された物件明細書のことをいいます。これらの書類には、競売物件の買受けに当たって重要な内容が記載されていますから、その内容をよく理解して吟味する必要があります。
さらに、現地で不動産を、法務局で権利関係を確かめるなど、必ず十分な調査、確認をするようにしてください(不動産によっては、内覧(見学)が実施されることがあります。)。
不動産の売却、入札等について、さらに詳しく知りたい方は、Q&Aをご覧ください。
5 入札から所有権移転まで
入札の際は、公告書に記載されている保証金を納付するほか、売却基準価額から、その10分の2に相当する額を差し引いた価額(買受可能価額)以上の金額で入札しなければなりません。
最高価で落札し、売却許可がされた買受人は、裁判所が通知する期限までに、入札金額から保証金額を引いた代金を納付します。
所有権移転などの登記の手続は、裁判所が行います。ただし、手続に要する登録免許税などの費用は、買受人の負担となります。
6 不動産の引渡し
引き続いて居住する権利を有する人が住んでいる場合には、すぐに引き渡してもらうことはできません。
そのような権利を有しない人が居住している場合には、その人に明渡しを求めることができます。この求めに応じないときは、代金を納付してから6か月※以内であれば、裁判所に申し立てて、明渡しを命じる引渡命令を出してもらうことができます。この引渡命令があれば、執行官に対し強制的な明渡しの手続をとるように申し立てることもできます。
※競売手続の開始前から抵当権者に対抗することができない賃貸借により建物を占有する者がいる場合は9か月
7 配当
裁判所が、差押債権者や配当の要求をした他の債権者に対し、法律上の順位に従って売却代金を分配する手続です。原則として、抵当権を有している債権と、債務名義しか有していない債権とでは、抵当権を有している債権が優先します。また、抵当権を有している債権の間の優劣は、抵当権の設定登記が早い債権が優先し、債務名義しか有していない債権同士は、平等に扱われます。
その他
その他の手続に関するご案内についてはQ&Aをご覧ください。
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