財産開示手続について

 財産開示手続は、権利実現の実効性を確保する見地から、債権者が債務者の財産に関する情報を取得するための手続であり、債務者(開示義務者)が財産開示期日に裁判所に出頭し、債務者の財産状況を陳述する手続となります。
 財産開示手続により債務者の財産が開示されても、その財産(給料や預貯金など)に対して差押の効力が及ぶわけではありません。債権を回収するためには、別途強制執行や担保権実行を行う必要があります。

(1) 申立て

 財産開示手続の申立ては、書面でしなければなりません。申立ては、債務者の住所地を管轄する地方裁判所(支部を含む。)にする必要があり、釧路地方裁判所管内の申し立てをする裁判所は、「2管轄裁判所」のとおりです。
 申立書の書式例は、「7申立書等(書式)」に掲載しています。

(2) 実施決定

 裁判所は、申立てが適法にされていると認められたときは、財産開示手続を実施する旨の決定をします。

(3) 期日指定・呼出し等

ア 実施決定が確定したら、財産開示期日(確定してから約1か月後)を指定して申立人及び債務者(開示義務者)を呼び出します。また、債務者(開示義務者)の財産目録提出期限(財産開示期日の約10日前)を指定して債務者(開示義務者)に通知します。
イ 提出された財産目録は、民事執行法201条に掲げられた者に限り、財産開示期日前においても閲覧、謄写することができます。

(4) 財産開示期日

ア 債務者(開示義務者)は、財産開示期日に出頭して債務者の財産について陳述しなければなりません。債務者(開示義務者)が財産開示期日に出頭しなかったり、債務者の財産について嘘を言った場合は刑事罰が科されることがあります。
イ 申立人は、財産開示期日に出頭して、債務者の財産の状況を明らかにするため、裁判所の許可を得て債務者(開示義務者)に質問することができます。ただし、根拠のない探索的な質問や債務者(開示義務者)を困惑させる質問は許可されません。
 なお、財産開示期日の円滑な実施のため、質問がある場合は、事前に質問書を提出してください。
ウ 債務者(開示義務者)が財産開示期日に出頭しなかった場合、財産開示手続は終了します。

 債務者の住所地を管轄する地方裁判所(支部を含む。)が、執行裁判所として管轄します。
 なお、釧路地方裁判所は、債務者の住所地が釧路地方裁判所網走支部及び同根室支部の管轄区域にある財産開示手続を釧路地方裁判所本庁で処理していますので、釧路地方裁判所管内における申し立てをする裁判所は次のとおりとなります。

釧路地方裁判所管内の申立先

債務者の住所地申立先
釧路市、釧路郡、厚岸郡、川上郡、
阿寒郡、白糠郡、網走市、北見市のうち
北見市常呂町、斜里郡、網走郡のうち
大空町、根室市、標津郡、野付郡、目梨郡
釧路地方裁判所〒085-0824北海道釧路市柏木町4番7号
帯広市、河西郡、広尾郡、十勝郡、
上川郡のうち新得町、清水町、河東郡、
中川郡のうち幕別町、池田町、豊頃町、
本別町、足寄郡
釧路地方裁判所帯広支部〒080-0808北海道帯広市東8条南9丁目1
北見市(北見市常呂町を除く。)、網走郡
のうち美幌町、津別町、常呂郡、紋別郡の
うち遠軽町、湧別町
釧路地方裁判所北見支部〒090-0065北海道北見市寿町4丁目7-36

 2,000円
 1名の債権者が複数の債務名義に基づいて申立てをする場合も1個の申立てとなります。
 債権者が数名の場合は、債務名義が1通であっても数個の申立てとなるため、人数分の申立手数料が必要となります。
 同一の債務名義に複数の債務者が記載されている場合は、財産開示手続の性質上、債務者ごとに別事件として申立てをすることが必要となります。

例)債権者1名、債務者1名、債務名義1通の場合 2,000円
  債権者1名、債務者1名、債務名義2通の場合 2,000円
  債権者2名、債務者1名、債務名義1通の場合 4,000円

6,000円
(500円×8枚、100円×10枚、84円×5枚、50円×4枚、20円×10枚、10円×10枚、5円×10枚、2円×10枚、1円×10枚)

(1) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者
 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者
 (主な債務名義の例)
 判決、仮執行宣言付判決、手形判決、※少額訴訟判決、※仮執行宣言付支払督促、※家事審判、和解調書、民事調停調書、△家事調停調書、訴訟費用額確定処分、公正証書など

  • 執行文について
    執行文の付与が必要です。ただし、※印は執行文は不要、△印は内容により執行文が不要となりますが、承継及び条件成就の場合は、必ず執行文が必要となります。
  • 確定証明書について
    債務名義が家事審判の場合は、確定証明書の添付が必要となります。

(2) 一般の先取特権を有する債権者
  債務者の財産について一般の先取特権(給料先取特権など)を有する債権者

(1) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者

ア 5(1)記載の執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者であること。

イ 執行開始要件を備えていること。
 (ア)債務名義の正本又は謄本が債務者に送達されていること、(イ)更正決定がされている場合は、その正本又は謄本が債務者に送達されていること、(ウ)条件成就執行文又は承継執行文が付与されている場合は、同執行文の謄本及び証明文書の謄本が債務者に送達されていること、(エ)請求が確定期限の到来に係る場合は、その期限が到来していること等の執行開始要件を備えていることが必要です。

ウ 強制執行を開始することができない場合でないこと。
 債務者が、破産手続開始決定、会社更生手続開始決定、民事再生手続開始決定及び特別清算手続開始決定を受けている場合は、破産債権等に基づく強制執行を開始することができないので、財産開示手続の申立てをすることはできません。

(2) 一般の先取特権を有する債権者

ア 債務者の財産について一般の先取特権(給料先取特権など)を有する債権者であること。
【参考】雇用関係の先取特権の存在について、申立人が証明すべき事実及び一般的な証明文書(PDF:163KB)

イ 一般の先取特権を実行できない場合でないこと。
 被担保債権の履行期が到来していること。
 債務者が、破産手続開始決定及び会社更生手続開始決定を受けている場合並びに民事再生手続において再生裁判所が一般の先取特権の実行の中止又は取消しを命じている場合は、破産債権等を被担保債権とする一般の先取特権を実行できないので、財産開示手続の申立てをすることはできません。

(3) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び一般の先取特権を有する債権者共通の要件

ア 次の(ア)又は(イ)に該当することを主張、立証する必要があります。

(ア) 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6か月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得ることができなかったこと。
 6か月以内に実施された動産、不動産若しくは債権に対する強制執行又は担保権の実行における配当若しくは弁済金の交付において、申立人が金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得ることができなかったことを主張し、配当表又は弁済金交付計算書の写しのほか、必要に応じて、開始決定正本写し又は差押命令正本写し、配当期日呼出状写し等の提出を要します。
(注)債務名義に奥書がなく、配当表又は弁済金交付計算書の写しからだけでは、財産開示手続における債務者に対するものか判断できない場合、債務者の氏名、住所の記載のある開始決定正本写し又は差押命令正本写し、配当期日呼出状写し等の提出が必要になります。

(イ) 知れている財産に対する強制執行(担保権の実行)を実施しても、申立人が当該金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得られないこと。
 申立人が、債権者として通常行うべき調査を行った結果、知れている財産がどれだけ存在するのか、そしてそれらの財産に対する強制執行(担保権の実行)を実施しても、請求債権の完全な弁済を得られないことを具体的に主張し、その疎明として、下記7申立書等の書式(1)エ又は(2)エの「財産調査結果報告書」に記載される資料の提出を要します。

a 不動産
 居住地、所在地(本店・支店)等の不動産を調査したが、これを所有していないことあるいは所有していても無剰余であること。
b 債権
【法人、個人共通】
 預貯金口座を調査したが不明であるか、あるいは残額では完全な弁済が得られないこと。
【法人、個人事業者】
 営業内容から通常予想される債権について調査したが、完全な弁済を得られる財産が判明しなかったこと。
【個人】
 勤務先を調査したが不明であるか、あるいは給料等のみでは完全な弁済を得られないこと。
c 動産、その他
 不明であるか、あるいは価値がないこと。

イ 債務者が申立ての日前3年以内に財産開示期日においてその財産を開示した者でないこと。
 本要件は、申立ての段階においては、明示的な主張立証を要しないと考えています。ただし、過去3年内に全部の財産を開示したことが実施決定前に裁判所に明らかになった場合には、申立人は、一部の財産の非開示(1号)、新たな財産の取得(2号)又は雇用関係の終了(3号)の要件を立証する必要があり、その立証がなければ申立ては却下されます。

(1) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者
ア 財産開示手続申立書(表紙)
 【書式】財産開示手続申立書(Word:22KB)
イ 当事者目録
 【書式】当事者目録(Word:20KB)
 【記載例】当事者目録(PDF:87KB)
ウ 請求債権目録
 【書式】請求債権目録(Word:20KB)
 【記載例】請求債権目録(PDF:95KB)
エ 財産調査結果報告書
 【書式】財産調査結果報告書(個人用)(Excel:31KB)
 【記載例】財産調査結果報告書(個人用)(PDF:305KB)
 【書式】財産調査結果報告書(法人用)(Excel:31KB)
 【記載例】財産調査結果報告書(法人用)(PDF:289KB)
オ 債務名義等還付申請書
 【書式】債務名義等還付申請書(Word:16KB)

(2) 一般の先取特権を有する債権者
ア 財産開示手続申立書(表紙)
 【書式】財産開示手続申立書(先取特権)(Word:23KB)
イ 当事者目録
 【書式】当事者目録(Word:20KB)
ウ 担保権・被担保債権・請求債権目録
 【書式】担保権・被担保債権・請求債権目録(Word:20KB)
 【記載例】担保権・被担保債権・請求債権目録(PDF:138KB)
エ 財産調査結果報告書
 【書式】財産調査結果報告書(個人用)(Excel:31KB)
 【記載例】財産調査結果報告書(個人用)(PDF:305KB)
 【書式】財産調査結果報告書(法人用)(Excel:31KB)
 【記載例】財産調査結果報告書(法人用)(PDF:289KB)

(3) 財産開示期日が実施されたことの証明申請書
 当庁において債務者に対して3年以内に財産開示期日が実施されたことの証明が必要な場合は申請してください(民事執行法197条3項要件の証明又は第三者からの情報取得手続における財産開示手続前置の要件立証や債務者の財産状況の疎明資料等として利用)。
【書式】財産開示期日実施証明申請書(Word:23KB)

(1) 申立書の作成方法
ア A4判縦の用紙に、横書き、左とじで作成してください。
イ 申立書表紙と各目録をホチキスどめし、各ページに契印又はページ数を付した上、各ページの上部余白に捨印を押してください。

(2) 申立書1枚目(表紙)
 申立てを理由付ける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに証拠を記載しなければなりません。

(3) 当事者目録
ア 当事者の氏名又は名称及び住所、代理人の氏名及び住所を記載してください。
イ 債務名義上の氏名又は名称及び住所について更正決定があるときは、その正本及び債務者に対する送達証明書を提出してください。
ウ 債務名義上の氏名又は名称及び住所について、変更又は移転がある場合は、当事者目録に、変更又は移転後の氏名又は名称及び住所を記載し、債務名義上の氏名又は名称及び住所も併記してください。この場合は、つながりを証明する住民票、戸籍謄本、商業登記事項証明書等の公文書を添付する必要があります。

(4) 請求債権目録(執行力のある債務名義正本に基づく場合)
ア 債務名義を、債務名義作成機関名、事件番号及び債務名義の種類(※書類の題名を正確に記載する。)で特定し、請求債権額を記載してください。
※例えば、執行文が付与された口頭弁論調書(判決)が債務名義の場合は、「執行力のある第○回口頭弁論調書(判決)正本」と題名を正確に記載してください。
イ 附帯請求(遅延損害金)は、申立日までに発生したものに限定する必要はありません。

(5) 担保権・被担保債権・請求債権目録(一般の先取特権に基づく場合)
  担保権を特定し、その担保権によって担保される債権額等を記載してください。附帯請求(遅延損害金)については、(4)イと同様です。

(6) 目録の部数
  迅速な作業のために、請求債権目録及び担保権・被担保債権・請求債権目録の写しを当事者の数に1部加えた部数の提出をお願いしています。目録の写しには、押印やホチキスどめはしないでください。

(1) すべての申立てに共通
ア 当事者が法人の場合
 商業登記事項証明書、代表者事項証明書等(3か月以内に発行されたもの)
イ 代理人による申立ての場合
 弁護士:委任状
 許可代理人:代理人許可申立書(申立手数料500円)、委任状、代理人と本人との関係を証する書面(社員証明書等)
ウ 債務名義や先取特権を証明する文書に書かれた当事者の氏名又は名称及び住所について、変更又は移転がある場合
 住民票、戸籍謄本、戸籍の附票、履歴事項証明書、閉鎖商業登記事項証明書等

(2) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者
ア 執行力のある債務名義の正本(5(1)参照)
イ アの送達証明書
ウ 債務名義の更正決定がある場合は、その決定正本
エ ウの送達証明書
オ 債務名義が家事審判の場合は、その確定証明書
カ その他執行開始要件を備えたことの証明を要する場合は、その証明文書(6(1)イ参照)
キ 債務名義等還付申請書(還付が必要な場合)
ク キの債務名義等還付申請をする場合、上記ア~カの写しを各1通

(3) 一般の先取特権を有する債権者
 一般の先取特権を有することの証明文書
 先取特権の存在にかかる証明文書は、原本及びその写し2通を裁判所に提出してください。
【参考】雇用関係の先取特権の存在について、申立人が証明すべき事実及び一般的な証明文書(PDF:163KB)

(1)民事執行法197条1項1号又は2項1号の要件を証明する文書(1号申立ての場合)
 6(3)ア(ア)参照
(2)民事執行法197条1項2号又は2項2号の要件を疎明する文書(2号申立ての場合)
 6(3)ア(イ)参照
(3)民事執行法197条3項の要件を証する文書(必要な場合)
 6(3)イ参照

 財産開示の申立てに対する認容決定に対しては債務者が、却下決定に対しては申立人が、それぞれ執行抗告の申立てをすることができます。
 執行抗告の申立ては、決定正本が送達された日から1週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出しなければなりません。
 また、抗告状に理由の記載がないときは、抗告状を提出した日から1週間以内に執行抗告の理由書を原裁判所に提出する必要があります。

 債務者(開示義務者)が財産目録を提出した後は、債務者の同意がない限り、財産開示手続申立事件を取
り下げることはできません。