トップ > 各地の裁判所 > 名古屋家庭裁判所 > 裁判手続を利用する方へ > 各種申立てのご案内(申立書式の案内)(名古屋家庭裁判所) > 遺産分割調停手続のご利用にあたって
- 1. はじめに
- 2. 当事者及び管轄(申立書の提出先)について
- 3. 手続をご利用いただくにあたっての留意点
- 3-1. 相続人は確定していますか?
- 3-2. 遺言書や遺産分割協議書がありませんか?
- 3-3. 遺産の範囲は確定していますか?
家庭裁判所の遺産分割調停手続は、被相続人の遺産としてどのようなものがあって、それを相続人の間でどのように分けるかについて、裁判官と調停委員で組織される調停委員会が、中立公正な立場で、申立人、相手方それぞれから言い分を平等に聞いて、調整に努めたり、時には具体的な解決策を提案するなどして、話し合いで円満に解決できるよう斡旋する手続です。
相続に関するもめごとは、相続人間の意思の疎通を欠いたり、感情のもつれが大きな原因であることが往々にしてありますが、このような場合でも、調停手続の中で話し合うことにより、互いに相手の立場を理解し、公平で納得できる結論を導き出すことが可能であり、望ましいものです。
調停は、訴訟(裁判)のように公開の法廷で争うものではなく、公開されない部屋(調停室)で行われますから、秘密が第三者に漏れるようなことはありません。
また、家庭裁判所は、申立人や相手方から独立した公平な立場で手続を進めますから、どちらか一方の味方をすることはありません。
どうしても話し合いができなかったり、折り合いがつかないなど、調停での解決が困難な状況に至った場合、家庭裁判所は引き続き事件を審判手続に移し、法律に従って裁判所としての判断を示すことになります。
当事者について
共同相続人や包括受遺者(遺言書で、例えば3分の1というように割合を示して遺産を与えられた者)等が申立人となります。
なお、遺産分割手続は、共同相続人及び包括受遺者全員が当事者となっている必要がありますので、申立人以外の方は、全員、相手方として当事者とする必要があります。
申立人、相手方のどちらになったとしても、有利になったり不利になったりすることはありません。
管轄(申立書の提出先)について
裁判所は全国各地にありますが、それぞれ担当する地域が決まっており、それを「管轄」といいます。
調停の申立てをする場合の提出先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所となります。管轄のない裁判所に申し立てられた場合、裁判官の判断により、管轄のある裁判所に事件を送ることがあります。
なお、最初から審判を申し立てる場合は、相続開始地(被相続人の最後の住所地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所が提出先となります。ただし、審判を申し立てたとしても、裁判官の判断により調停に付することがありますのでご了承ください。
※申立てに必要な書類の確認はこちら
→遺産分割手続の申立てに必要な書類について
遺産分割手続を行うためには、必ず相続人全員が参加しなければならないなど、いろいろな決まりがあります。次の各項目に該当する場合は、遺産分割手続を利用することができないか、又はご利用いただく前に、あらかじめ別の手続を行って準備をする必要が生じることがあります。
それぞれの項目をよく御覧いただき、すぐに遺産分割手続をご利用いただくことが可能なのかどうか、再度ご検討いただくようお願いいたします。
遺産分割は、被相続人(亡くなった方)の相続人全員が参加して行う必要があります。
- 相続人の中に、行方不明の方がおられませんか?
→戸籍や住民票などで調査を尽くしても行方不明の場合、まず、「不在者財産管理人(行方不明の方の財産を管理する人)の選任」という手続が必要です(7年以上、生死が不明な場合には「失踪宣告」という手続もあります。)。この手続については、遺産分割センターでは取り扱っておりませんので、名古屋家裁本庁であれば家事受付センターへ、支部であればそれぞれの窓口へお尋ねください。 - 相続人の中に、例えば認知症や重い精神疾患などのために、自分で判断する力のない方や、判断力に問題のある方はおられませんか?
→まず、「成年後見手続」(判断力に問題のある方を補助する人を選ぶ手続)が必要です。この手続については、遺産分割センターでは取り扱っておりませんので、名古屋家裁本庁であれば後見センターへ、支部であればそれぞれの窓口へお尋ねください。 - どなたかの養子縁組や結婚について、これは無効だ、という主張をするご予定がありますか?
→効力を争うのであれば、養子縁組無効や、婚姻無効について、家事調停(調停で合意ができなければ人事訴訟という裁判)で、先に決着をつける必要があります。これらの手続については、遺産分割センターでは取り扱っておりませんので、名古屋家裁本庁であれば、調停手続は家事受付センターへ、人事訴訟手続は人事訴訟係へお尋ねいただき、支部であればそれぞれの窓口へお尋ねください。 - 相続人の中に、未成年者の方がおられませんか?
→相続人の中に未成年者がいる場合には、その未成年者に代わって親権者が法定代理人として遺産分割手続に参加することになります。しかし、親権者も未成年者と同じく相続人となっている場合や、同じ親権者を持つ複数の未成年者が相続人になる場合には、利害対立が起こるおそれがありますので、未成年者のために「特別代理人」(その遺産分割事件について、親権者に代わって未成年者を代理する人)を選ぶ手続が必要です。この手続については、遺産分割センターでは取り扱っておりませんので、名古屋家裁本庁であれば家事受付センターへ、支部であればそれぞれの窓口へお尋ねください。
遺産分割は、分け方の決まっていない遺産について行います。有効な遺言書がある場合は、遺言書の内容が優先されます。また、有効な遺産分割協議により既に遺産の行き先が決まっている場合も同様です。
- 公正証書遺言、自筆証書遺言又は遺産分割協議書がありませんか?
- 遺言や遺産分割協議書により遺産全部の行き先が決められていませんか?
- 遺言書や遺産分割協議書の有効性に争いがありますか?
→ 遺言や遺産分割協議書により遺産全部の行き先が決まっている場合は、原則的に遺産分割を行う余地はありません。遺言で遺産全部の行き先が決まっているが、自分の取り分が法律の決めた最低保障分(遺留分)に満たないのでその分をもらいたい、という方は、「遺留分侵害額請求」又は「遺留分減殺」という別の調停をしていただくことになります。遺言や遺産分割協議書に書かれていない行き先未定の財産がある場合には、遺産分割手続のご利用が可能です。
遺言や遺産分割協議が無効だ、との主張があり、相続人間で争いになった場合には、無効かどうかを決める民事裁判を先に行って、遺産分割できるかどうかをはっきりさせる必要があります。
遺産分割は、被相続人の遺産を、相続人の方に分配(割り当て)する手続です。既に解約されたり引き出されて存在しなくなってしまった預金をまだ存在するかのように扱って誰かに割り当ててしまったり、他人名義の不動産を誰かに割り当ててしまった場合には、割り当てられた相続人が大変な迷惑を受けてしまいます。ですから、遺産として分割して大丈夫かどうかということを、よく確認する必要があります。
- 遺産の中に、被相続人以外の方の名義のものや、所有者について争いがある財産がありませんか?
→ 他人名義のものについては、名義人が遺産(亡くなった方の財産)であることを争っている場合、「遺産確認の訴え」という民事裁判で、遺産であることを先にはっきりさせておく必要が生じます。 - 無断解約・引き出し等された預貯金の行方を捜すことだけを目的として遺産分割の申立てをするお考えではありませんか?
→預貯金が、被相続人の生前や死後に無断で解約や引き出しされた場合、その責任を追及するための手続は、原則として、遺産分割手続ではなく、「不当利得返還請求訴訟」などの民事裁判です。この裁判は、請求する額に応じて、簡易裁判所又は地方裁判所が取り扱います。そのため、家庭裁判所が解約された預貯金についての調査をすることはありません。
ただし、相手方が、①自分が預貯金を解約等したことを認めて、②今でも一定の額のお金を預かっているということも認め、さらに、相続人全員が、③そのお金を遺産として分割の対象とすることに同意した場合にのみ、遺産分割手続で解約預金について取り扱うことができます。しかし、相手方が①及び②について認めない(同意しない)ときや、②の預かっている額について争いになってしまったとき、相続人全員が③について同意しないときは、遺産分割手続で取り扱うことはできず、原則どおり、責任追及しようと考える相続人が、解約等した方に対して民事裁判を起こし、その裁判で解決することになります。
例外的に、被相続人が令和元年7月1日以降に死亡した場合で、被相続人の死亡後に預貯金を無断で解約したり引き出したりした相続人が確定している場合には、解約や引き出された財産について、解約や引き出しをした相続人以外の相続人全員の同意があれば、これを遺産分割の対象となる場合があります。
※遺産分割手続の手続案内はこちら
→遺産分割調停又は審判申立てをお考えの方へ