労働審判手続の利用をお考えの方へ

山口地方裁判所

1 労働審判手続の主な特徴

労働審判手続の主な特徴は,次のとおりです。

 (1) 3回以内の期日(いずれも原則として非公開)で争点整理(争いになっている点が何かを明確にする作業)・証拠調べ・調停を行い,調停が成立しない場合には審判(判決に相当する判断)を行います。

 (2) 上記の審理,調停及び審判は,いずれも,労働審判委員会(地方裁判所の裁判官である労働審判官1人,労働者側の労働関係に関する専門知識等を有する労働審判員1人,使用者側の労働関係に関する専門知識等を有する労働審判員1人の計3人)が担当し,審判は,労働審判委員会の過半数意見で決する決議によります。

 (3) 審判では,民事訴訟の判決のような「申立てが認められるか否か。」の判断だけに限らず,審理の経過を踏まえて,実効性のある合理的な解決策を命ずることもできるとされています。

 上記審判に対し,その内容の告知を受けた日から2週間以内に,当事者のどちらか一方からでも,適法な異議の申立てがなされると,当該審判は失効し,労働審判申立時に訴訟提起があったものとみなされて,その後は,民事訴訟手続で最初から審理をやり直すことになります。

2 手続の選択

 労働審判手続は,裁判所において,個々の労働者と使用者との間に生じた労働紛争を解決する手続として,これまであった民事訴訟(簡易裁判所における少額訴訟を含む。),民事調停,仮処分,支払督促といった諸手続に,新たに加えられたもので,これにより,そうした紛争を解決しようとする利用者の選択の幅が広がったことになります。なお,労働審判手続は,地方裁判所の専属担当であるところ,申立て先としては,山口地方裁判所(本庁)のみとなります(ただし,裁判所が相当と認める場合は,支部(周南,萩,岩国,下関,宇部の各裁判所)に設置されたテレビ会議システムを介して労働審判手続期日に出席することが認められる場合があります。)。

 これら各手続の特徴(違い)は,民事事件Q&Aのとおりです。労働審判手続の利用を考えておられる方は,紛争の実情を考慮し,その解決に向けた手段として,労働審判手続の利用が妥当かどうか,よく検討するようにしてください(場合によっては,ほかの各手続の利用も合わせてご検討ください。)。

 労働審判手続を選択される場合には,たとえ紛争の内容が複雑であっても,上記のとおり,短期間で審理を終えることを達成するために,事前に難しい内容の準備作業を多く行う必要性が特に求められますので,労働審判手続の利用に当たっては,法律の専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

3 労働審判手続申立て後の手続

 申立書や提出していただく書類(なお,本手続で想定される基本的な証拠(書証)の例は労働事件基本書証一覧(PDF:904KB)を参照ください。)に不備・不足があれば,早急に補正(追加)をしていただきます。
  不備等がない場合には,申立てから数日後に,第1回審判期日を指定の上,相手方に対して申立書や証拠書類の写しと期日呼出状を送付します。また,申立人に対しても,期日呼出状を送付します。第1回審判期日は,原則として,申立てがあった日から40日以内の日を指定します。

 不備等がない場合には,申立てから数日後に,第1回審判期日を指定の上,相手方に対して申立書や証拠書類の写しと期日呼出状を送付します。また,申立人に対しても,期日呼出状を送付します。第1回審判期日は,原則として,申立てがあった日から40日以内の日を指定します。

 その後,相手方から答弁書(申立てに対する答弁・反論等)や証拠書類の提出があれば,申立人に対して,これを送付しますので,さらに,申立人の方で再反論や追加の証拠があれば,第1回審判期日までに,その準備をしておいてください(申立て後の主張は,原則として,期日当日に直接お聞きすることになっていますので,話したいことをきちんと準備しておくことが重要です。)。

 なお,期日に出頭する際には,関係書類一式を全て持参するようにしてください。

4 最後に

 労働審判手続は,適正で充実した審理を目指すのはもちろん,前述のとおり,第1回審判期日を,申立ての日から40日以内の日に指定し,かつ,原則として3回以内の期日で審理を終結し,結論を出すという,迅速な解決も目的の一つとされています。そのためには,申立人だけでなく,相手方にも,事前に十分な準備を行い,労働審判手続で解決を図ろうという積極的な取組姿勢が必要不可欠です。

 その意味で,裁判所に提出する書類等には,できるだけ不備・不足がないように,また,提出できる書類は速やかに提出するようにご協力をお願いするとともに,申立て後も,上記3のとおり,事前に,しっかりと準備作業をしてください。

 (この意味でも,上記2のとおり,法律の専門家である弁護士への相談・委任もご検討ください。)