弁護士は,裁判所のいろいろな事件や手続について,当事者の代わりあるいは補助者として関与しています。一般的には,裁判所の手続は弁護士に依頼しなくても,本人自身でできますが,刑事事件では,弁護士がいないと裁判ができない場合もあります。
その役割を具体的に各事件の種類ごとに見ると,民事事件のうち,一般的な民事訴訟においては,当事者である原告又は被告から依頼を受けて,代理人として,各種書類の作成や法廷での主張・立証活動をしたり,和解などの場では相手方との交渉を行う場合もあります。それ以外の調停や民事執行手続,倒産手続についても,基本的には当事者等の代理人として民事訴訟手続の場合と同じような活動をします。また,破産手続においては,破産管財人として破産した人や会社の財産を強制的に金銭に換えて債権者に分配することを行うこともあります。多くの破産管財人は弁護士から選任されています。
刑事事件では,犯罪を行ったとして検察官から起訴された被告人の弁護人として,被告人の正当な権利利益を擁護するため,被告人にとって有利な事情を主張,立証します。そのための準備として,弁護人は訴訟記録を検討したり,被告人と会って事情を聴くなどします。
なお,弁護人は,被告人自身あるいはその親族等が選任する(私選弁護人)のが原則ですが,貧困その他の理由で私選弁護人を選任できないときは,被告人の請求により,また,一部の重大事件などにおいて被告人に弁護人がついていないときは職権により,裁判所が弁護人を選任する(国選弁護人)ことになっています。
少年事件では,少年の付添人として,家庭裁判所に協力して少年の健全育成という目的を適正に実現させる役割と,少年の権利利益を守る弁護人的な役割を果たしています。少年事件における付添人の選任については,基本的には少年やその保護者などから依頼を受けた場合(私選付添人)ですが,一部の事件については,審判に検察官の出席を求める場合において,少年に弁護士である付添人がいないときは,裁判所が選任する(国選付添人)ことになっています。
家事事件では,審判でも調停でも,民事事件と同様に当事者から依頼を受けて代理人として,手続上必要な書類の作成や主張・立証活動などを行っています。また,家庭裁判所によって財産管理人や後見人などに選任されることもあります。
これらの場合以外にも,刑事事件や少年事件に関して,その事件の被害者などが法律上認められている手続をする場合の代理人となることもありますし,直接裁判に関係するわけではありませんが,裁判が始まる前の段階において,当事者などの法律相談を受けて紛争解決に向けたアドバイスをするといった形でも関与しています。
弁護士になるためには,原則として,司法試験に合格し,司法修習を終えることが必要です。その上で,日本弁護士連合会に弁護士として登録をするとともに,全国に52ある弁護士会のどれかに入会すると,弁護士として活動することができます。