裁判官は,憲法や法律に拘束されるほかは,良心に従って,独立して各事件について判断を行います(憲法第76条第3項)。
民事事件のうち民事訴訟では訴訟を起こした原告とその相手方である被告の双方の主張を聴き,提出された証拠を調べたりして,法律を適用し,原告の請求を認めてよいかを判断します。
民事訴訟は,一般に法廷で行われますが,少額訴訟などでは,当事者がリラックスした雰囲気の中で話ができるように,裁判官もだ円形のテーブルを囲んで着席するラウンドテーブル法廷を使ったりしています。それ以外の執行手続や倒産手続においても,当事者などから出される主張や証拠に基づいて,法律上の判断をするのが裁判官の仕事です。
刑事事件では,罪を犯したとして検察官に起訴された被告人について,検察官から提出された証拠を調べ,被告人やその弁護人の言い分や証拠も調べて,被告人が罪を犯したのかどうかを判断します。その上で,罪を犯したと認められる場合には,どのような刑罰を与えればいいのかも判断します。
また,捜査機関が強制捜査をする場合には,被疑者などの基本的人権を守る観点から,原則として逮捕状や捜索差押令状などの令状が必要となりますが,これらの令状を発付するか否かを判断することも裁判官の仕事です。
家事事件のうち審判という手続では,裁判官が当事者の言い分を聴いたり,当事者が提出する証拠を調べるなどして,事案に応じて,家庭裁判所調査官の報告や参与員の意見を聴くなどした上で審判をします。
少年審判では,捜査機関から送られた記録などを調査した上で,少年,保護者,付添人の言い分を聴いたり,家庭裁判所調査官の調査結果の報告と意見を聴いたりして,少年が非行を犯したかどうか,今後の更生のためにはどのような処分が適当かを裁判官が判断します。
これらの裁判は,担当する裁判所や事件の内容などによって,一人の裁判官が取り扱う場合と複数の裁判官で構成する合議体で取り扱う場合があり,後者を合議制といいます。合議制で裁判を行う場合は,裁判官のうちの一人が裁判長として手続を進めていきます。
民事事件や家事事件で行われる調停という手続では,裁判官は2人以上の調停委員とともに調停委員会というチームを組んで手続を進めます。そこでは,当事者が互いに歩み寄って紛争を解決することができるように,当事者双方の話を聴き,話合いによる解決を目指します。
裁判官は,原則として,司法試験に合格し,司法修習を終えた人の中から任命されます。ただ,裁判官の中でも,最高裁判所判事は,学識経験者などから任命されることがありますし,簡易裁判所判事については,司法修習を終えた人でなくても必要な知識があれば,任命されることがあります。
また,裁判の公正を保つために,裁判官には身分保障が与えられていて,憲法上一定の手続によって罷免される場合を除いては,その意思に反して免官,転官,転所,停職又は俸給の減額を受けることはありません(憲法第78条,裁判所法第48条など)。