法律上、裁判所では日本語を用いることになっています(裁判所法第74条)が、一方では、社会活動や経済活動の国際化とともに日本語が分からない外国人が日本の裁判に関係することが増えています。このような場合には、その外国人がきちんと裁判に関与できるように法廷等での発言を通訳する通訳人が必要になります。通訳人は、例えば被告人が外国人である刑事裁判においては、被告人の発言を日本語に通訳し、裁判官、検察官、弁護人、証人などの発言を外国語に通訳して、日本語が分からない被告人と裁判官、検察官、弁護人などとの間の橋渡し役になります。こうしたことを通じて、通訳人は、被告人の人権を保障し、適正な裁判を実現する上で非常に重要な役割を果たしています。裁判においては、中立・公正な立場で、法廷での発言を忠実かつ正確に通訳することが必要になります。このような通訳人は、それぞれの裁判において、通訳が必要となった場合に裁判所が最高裁判所が取りまとめている通訳人候補者名簿を参考にするなどして選任しています。通訳人も通訳人候補者も、裁判所の職員ではありません。
通訳人として選任されることを希望する人に対しては、各地方裁判所において裁判官が面接を行います。面接の結果、通訳人としての適性を備えていると認められた人に対しては、刑事手続の概要や法律用語、通訳を行うに当たっての一般的な注意事項を説明し、これらの手続を経た人が通訳人候補者名簿に登載されます。裁判所では、毎年、多くの通訳人候補者を対象として、担当する通訳言語ごとに、法廷通訳経験の多寡などに応じた複数のカテゴリーの研修を実施しており、法廷通訳の実践的な知識や技能を習得できるようにしています。
また、以上のような日本語が分からない場合の言葉の通訳だけでなく、聴覚や言語に障害のある人との通訳を行う場合も通訳人に通訳してもらいます。
なお、通訳人については、裁判所の職員ではないため給与等は支給されませんが、法廷等で通訳を行った場合には、通訳料と旅費等が支給されることになっています(民事訴訟費用等に関する法律第18条、刑事訴訟法第178条)。