簡易裁判所の民事訴訟では,一般市民の中から選ばれた司法委員に加わってもらい,その豊富な経験や専門知識,健全な良識を争いの解決に生かしています。
司法委員は,裁判官が和解を試みるときにその補助をしたり,審理に立ち会って,裁判官に,参考となる意見を述べたりします(民事訴訟法第279条第1項)。和解を補助する場合には,その社会経験を生かして,どのような内容の和解をすれば争いが抜本的に解決するかなどについて裁判官に助言したり,裁判官と共に当事者への説明や当事者の説得に当たったりします。また,審理に立ち会う場合には,一般市民の良識や知識,経験に基づき,証人の証言が信用できるかどうか,事件の見方などについて,裁判官に意見を述べることになります。この意見は,あくまで参考意見なので,最終的には裁判官が判断することになります。
司法委員は,毎年あらかじめ地方裁判所が「司法委員となるべき者」として選任している人の中から,個別の事件ごとに簡易裁判所が指定することによってその身分を取得します(民事訴訟法第279条第3項)。選任されるために特別な資格などは必要なく,社会人としての健全な良識のある人の中から選任されます。弁護士や大学法学部教授などが選任されることもありますが,法律知識の有無とは関係なく,地域の事情に詳しい人や,医学的知識や不動産の鑑定に関する知識を持っている人なども選任されていて,平成17年現在,全国で約6,000人の司法委員となるべき人がいます。
なお,司法委員は個別の事件ごとに指定されるものであり,非常勤の裁判所職員です。実際に司法委員に指定されて事件に関与した場合には,必要な旅費や日当が支給されることになっています(民事訴訟法第279条第5項)。