1. 概要
被相続人が亡くなり,その遺産の分割について相続人の間で話合いがつかない場合には家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます。調停手続を利用する場合は,遺産分割調停事件として申し立てます。この調停は,相続人のうちの1人もしくは何人かが他の相続人全員を相手方として申し立てるものです。
調停手続では,当事者双方から事情を聴いたり,必要に応じて資料等を提出してもらったり,遺産について鑑定を行うなどして事情をよく把握したうえで,各当事者がそれぞれどのような分割方法を希望しているか意向を聴取し,解決案を提示したり,解決のために必要な助言をし,合意を目指し話合いが進められます。
なお,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,裁判官が,遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して,審判をすることになります。
2. 申立人
- 共同相続人
- 包括受遺者
- 相続分譲受人
3. 申立先
相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所
4. 申立てに必要な費用
- 被相続人1人につき収入印紙1200円分
- 連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。なお,各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)
5. 申立てに必要な書類
(1) 申立書1通及びその写しを相手方の人数分(6の書式及び記載例をご利用ください。)
(2) 標準的な申立添付書類
- ※ 同じ書類は1通で足ります。
- ※ 戸籍等の謄本は,戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。
- ※ 申立前に入手できない戸籍等がある場合は,その戸籍等は申立後に追加提出することでも差し支えありません。
- ※ 審理のために必要な場合は,追加書類の提出をお願いすることがあります。
共通
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の住民票又は戸籍附票
- 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書,預貯金通帳の写し又は残高証明書,有価証券写し等)
相続人が,被相続人の(配偶者と)父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)の場合
- 被相続人の直系尊属に死亡している方(相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:相続人が祖母の場合,父母と祖父))がいらっしゃる場合,その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
相続人が,被相続人の配偶者のみの場合,又は被相続人の(配偶者と)兄弟姉妹及びその代襲者(おいめい)(第三順位相続人)の場合
- 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 被相続人の兄弟姉妹に死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
- 代襲者としてのおいめいに死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
6. 申立書の書式及び記載例
7. 手続の内容に関する説明
- 1. 被相続人の債務の負担者などについても,家庭裁判所で話し合うことができるのですか。
- 被相続人の債務(借金等)は,法律上相続開始によって法定相続分に応じて当然に分割されますので,原則として,遺産分割の対象にはならないと考えられています。したがって,調停において,当事者間で特定の相続人が債務を相続する旨の合意が成立したとしても,あくまで相続人間の内部関係を決めたに過ぎず,その内容を債権者に主張できるわけではありません。
- 2. 相続人の一人が遺産の一部を隠していると疑っているのですが,家庭裁判所に申立てをすれば調べてもらえるのですか。
- 家庭裁判所の遺産分割手続は,遺産を探し出すことを目的とした手続ではありません。もちろん,調停のときなど,相続人に対して,その遺産の範囲や内容について意見を聴き,必要な資料の提出を促すことはありますが,ほかにも遺産があると考える場合には,原則として,自らその裏付けとなる資料を提出することが求められます。
- 3. 調停での話合いがまとまらない場合は,どうなるのですか。
- 調停は不成立として終了しますが,引き続き審判手続で必要な審理が行われた上,審判によって結論が示されることになります。