簡易裁判所は,罰金以下の刑に当たる罪及び窃盗や横領など比較的軽微な罪の刑事事件について,第一審の裁判権を持っています。
簡易裁判所は,通常,禁錮以上の刑を科することはできません。しかし,特別に法律で規定された罪に限り,3年を超えない範囲で懲役を科すことができます。簡易裁判所が,この制限を超える刑を科すのを相当と認めるときには,事件を地方裁判所に移送しなければなりません。
簡易裁判所が扱うものとして,第一審の裁判手続で述べた正式裁判の手続以外に略式手続があります。これは,検察官が被疑者を起訴して裁判所に処罰を請求するときに,公開の法廷で公判を開いて法律や規則に定められた厳格な手続に従って審理し,正式の判決をするよう求めるのではなく,より簡便な手続で判決に代わる裁判を請求した場合に行われるものです。この手続によることに被疑者の異議がないことが必要であり,手続は,法廷を開かない書面審理で行われ,検察官が提出した証拠を裁判官が検討して,相当と認めた場合に,略式命令を出すことになります。
略式命令で科すことのできる刑罰は,100万円以下の罰金又は科料に限られます。もっとも,略式命令に不服がある当事者(検察官及び被告人)は,一定期間内に正式裁判の申立てをすることができ,その場合には,略式命令は効力を失います。