保護命令には、(1)申立人への接近禁止命令、(2)申立人への電話等禁止命令、(3)申立人の子への接近禁止命令、(4)申立人の子への電話等禁止命令、(5)申立人の親族等への接近禁止命令、(6)退去等命令、の6つの種類があります。このうち、(2)~(5)は、(1)の命令の実効性を確保する付随的な制度ですから、単独で求めることはできず、(1)の命令と同時か、同命令が既に出ている場合のみ発令されます。
申立人への接近禁止命令
1年間、申立人の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
申立人への電話等禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中、次に掲げるいずれの行為も禁止する保護命令
- 面会を要求すること。
- その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
- 電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、文書を送付し、通信文その他の情報(電気通信(電気通信事業法(昭和59年法律第86号)2条1号に規定する電気通信をいう。以下同じ。)の送信元、送信先、通信日時その他の電気通信を行うために必要な情報を含む。以下「通信文等」という。)をファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
上記「電子メールの送信等」とは、次のア、イのいずれかに掲げる行為(電話をかけること及び通信文等をファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう(以下同じ。)。
ア 電子メール(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)2条1号に規定する電子メールをいう。)その他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信を行うこと。
イ 上記アに掲げるもののほか、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用するものを用いて通信文等の送信を行うこと。 - 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、通信文等をファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールの送信等をすること。
- 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
- その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
- その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
- その承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置(当該装置の位置に係る位置情報(地理空間情報活用推進基本法(平成19年法律第63号)2条1項1号に規定する位置情報をいう。以下同じ。)を記録し、又は送信する機能を有する装置で、同法2条4項に規定する衛星測位の技術を用いて得られる当該装置の位置に係る位置情報を電磁的記録として記録し、又はこれを送信する機能を有するものをいう。以下同じ。)(次の10に規定する行為がされた位置情報記録・送信装置を含む。)により記録され、又は送信される当該位置情報記録・送信装置の位置に係る位置情報を次の「位置情報の取得方法」記載の方法により取得すること。
「位置情報の取得方法」
ア 位置情報記録・送信装置の映像面上において、電磁的記録として記録された位置情報を視覚により認識することができる状態にして閲覧する方法
イ 位置情報記録・送信装置により記録された電磁的記録に係る記録媒体を取得する方法(当該電磁的記録を他の記録媒体に複写する方法を含む。)
ウ 位置情報記録・送信装置により送信された電磁的記録を受信する方法(当該方法により取得された位置情報を他人の求めに応じて提供する役務を提供する者から当該役務を利用して当該位置情報の提供を受ける方法を含む。) - その承諾を得ないで、その所持する物に位置情報記録・送信装置を取り付けること、位置情報記録・送信装置を取り付けた物を交付することその他次の「その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為」記載の行為をすること。
「その移動に伴い位置情報記録・送信装置を移動し得る状態にする行為」
ア その所持する物に位置情報記録・送信装置を差し入れること。
イ 位置情報記録・送信装置を差し入れた物を交付すること。
ウ その移動の用に供されることとされ、又は現に供されている道路交通法(昭和35年法律第105号)2条1項9号に規定する自動車、同項10号に規定する原動機付自転車、同項11号の2に規定する自転車、同項11号の3に規定する移動用小型車、同項11号の4に規定する身体障害者用の車又は道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)1条1号に規定する歩行補助車(それぞれその所持する物に該当するものを除く。)に位置情報記録・送信装置を取り付け、又は差し入れること。
申立人の子への接近禁止命令及び電話等禁止命令
- 子への接近禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中、申立人の同居している子の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令 - 子への電話等禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中、上記「申立人への電話等禁止命令」記載の2から10までの各行為(ただし、5に掲げる行為にあっては、電話をかけること及び通信文等をファクシミリ装置を用いて送信することに限る。)を禁止する保護命令
※ 当該子が15歳以上のときは、子の同意がある場合に限ります。
※ 相手方が申立人と同居している子を連れ戻す疑いがあるなどの事情があり、子の身上を監護するために申立人が相手方と面会せざるを得ない事態が生じるおそれがある場合に、申立人の生命又は心身に対する危険を防止するために発せられます。
申立人の親族等への接近禁止命令
申立人への接近禁止命令の期間中、申立人の親族その他申立人と社会生活において密接な関係を有する者(以下「親族等」という。)の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
※ 当該親族等が申立人の15歳未満の子である場合を除き、当該親族等の同意があるときに限ります(当該親族等が15歳未満又は成年被後見人である場合には、その法定代理人の同意)。
※ 相手方が親族等の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることなどから、申立人がその親族等に関して相手方と面会せざるを得ない事態が生じるおそれがある場合に、申立人の生命又は心身に対する危険を防止するために発せられます。
退去等命令
2か月間(建物の所有者又は賃借人が申立人のみである場合において、申立人の申立てがあったときは、6か月間)、申立人と共に生活の本拠としている住居から退去すること及びその住居の付近をはいかいしてはならないことを命ずる保護命令
※ 申立人と相手方が生活の本拠を共にする場合に限ります。
相手方が保護命令に違反すると、刑事罰(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金)の制裁が加えられることになります。